第2章 奈菜と出会ったコンビニ(その24)
マスターが席を移動してきて、店長の横に座る。
つまり哲司の前の席である。
「怒らないでお聞き頂きたいのですが、貴方の事は興信所で調べさせていただきました。」
哲司にとっては聞き捨てならないことなのだが、マスターは淡々とその事実を口にする。
「えっ?・・・興信所って、それは探偵社のような・・・?」
哲司は「まさか」と思っている。
今時、この個人情報が云々される時代に、興信所という言葉を聞かされても、どうしてだかピンと来ない。
ただ、無性に腹が立つ。
「何故ですか?」
哲司は改めてその理由を問う。
少し言葉尻が強くなっている。
「まずは、そんな失礼なことをしたことについては、このとおり陳謝いたします。」
マスターはテーブルの上に両手をつくようにして頭を深々と下げた。
同じように、店長も少し遅れたものの、同じように頭を下げた。
「お怒りはごもっともです。
ですが、その結果として、本日のお願いに至ったのです。」
まだ、頭を下げた状態のままで、マスターはその後を話し始める。
「どうして僕のことをお調べになったのですか?」
哲司はそれを繰り返す。
「それをお聞きしないと、これ以上は・・・」
哲司は席を立とうとする。決してパフォーマンスではない。
その点がはっきりしないのであれば、この場を離れるつもりだった。
「なんで、そこまでされなきゃいけないんだ?」という思いが強いのだ。
「私は、昔の人間です。
大事な孫娘の将来が掛かっているのですから、何だってするつもりです。
その気持だけは、お分かりいただけるでしょう?」
「どういうことです?」
「奈菜は、嫁がせた私の娘の子供です。
つまり外孫なんですが、長男であるこいつが結婚に失敗をしたこともあって、私にとってはたったひとりの孫娘なんです。
そりゃあ、可愛くて仕方の無い子です。
その可愛い孫娘が、どこの誰とも分らない男の子供を身ごもった、と聞かされたときには、衝撃のあまりあの世へ行きそうになりました。」
「そのお気持は分ります。」
「でしょう?
それで、あの子を問い詰めましたよ。あの子の父親と一緒になって。
なぜ、そんな結果になるようなことをと。」
「・・・・・・・・・・・・・」
「でもねぇ、あの子は泣きながら言うのですよ。
そんなつもりはまったく無かった。
ただ、自立したくて、雑誌か何かのモデルのコンクールに出ることにしていたのだと。」
「雑誌のモデルですか・・・。」
「その予備審査に参加して、気がついたら・・・・、と言うのです。」
(つづく)