第7章 親と子のボーダーライン(その253)
「そ、それで?」
哲司は、どうしてかその先を急ぎたくなる。
小学校3年生の子供にとって、今、お婆さんが話していることは決して面白い話ではない。
随分と昔の、戦争をやっていた時代の話だ。
しかも、どちらかと言えば、気の重たくなるような内容だ。
それなのに、哲司は、お婆さんのその後が気になった。
「爺ちゃんにお手紙を書いた。赤ちゃんが出来ましたよってね。
でも、爺ちゃんからは何の返事もなかった。」
「ど、どうして?」
「う~ん、これは後から聞いた話だったけれど、どうやら、婆ちゃんが書いた手紙が届かなかったみたい。
丁度、その頃は、大陸を移動してたみたいでね。」
「大陸って、アメリカ?」
哲司は、その頃の戦争はアメリカとやっていたと聞かされていたからそう思った。
「いや、今の中国だよ。」
「えっ! 中国なの?」
哲司の知識では、そこで中国が出てくること自体が不思議だった。
「その頃は、中国で戦争をしていたからね。
日本が攻めて行ってたんだ。」
「・・・・・・。」
哲司は、テレビゲームの一場面を思い浮かべた。
「戦争」「攻めて行く」という言葉が、それを連想させたのだろう。
「で、爺ちゃん、大怪我をしてしまってね。」
「ど、どうして?」
「戦争でだよ。敵の大砲の玉が近くで爆発したらしくって、背中を大火傷をしたんだよ。」
「ええっっっ・・・。」
哲司は、熱い風呂に入った時のことを思い出す。
「でも、本当に良かったよ。」
「ん?」
「命が助かって・・・。」
「ああ・・・。でも・・・。」
哲司は、お婆さんの言葉に違和感を感じた。
確かに、火傷だけで済んだという理由があるのかもしれない。
それでも、その大火傷で良かったと言えるのが不思議だった。
「その時の戦闘で、爺ちゃんの戦友が8人も死んだらしい。
生き残ったのは、爺ちゃんともうひとりだけだったって・・・。」
「・・・・・・。」
哲司は言葉が無い。
これは、ゲームの話ではないことだけは分かっていたからだ。
実際にあった事なのだという緊張感が哲司の口を閉じさせていた。
(つづく)