第7章 親と子のボーダーライン(その250)
哲司は、身体的にもコンプレックスがあった。
まずは顔だ。
どう言えば良いのだろう?
自分では男の子らしい顔をしているとは思うのだが、とんと女の子には人気が無い。
どこがどうだとは言い難いのだが、何となくバランスが悪いようだ。
決して「カッコいい」とか「可愛い」とは言われない。
次に、身長だ。
そこそこ体力には自信があって、ジャンプ力もそれなりにあると思っている。
だが、そこに身長の高低が加算されるバレーボールやバスケットボールなどでは、やはり苦しかった。
もう少し背が高ければと何度も思った。
これとて、自分ではどうすることも出来ない。
いくら努力したとしても、ハンサムにはなれないし、身長が伸びたりはしない。
俗に言う、持って生まれた特徴がそのまま現れる。
つまりはだ。
そうしたいろんな能力や特性というものは、そのすべてを親から受け継いでいる。
友達の誰とも違う能力や特性だ。
他に比べて、優れているものも確かにある。
足が速いなどというのはその代表だろう。
それでもだ。やはり、他に比べて劣っているものも沢山ある。
いや、劣っている方が圧倒的に多い。
その責任は、生んだ親には無いのだろうか?
そのすべてに対して「頑張れ」と言うだけでは、その責任を果たしたとは言えないのではないか。
そんな気がしてならなかった。
子供の哲司から見て、両親は、決して誇れる親だとは思えない。
父親は、毎日仕事をしに会社に行っているが、どんな仕事をしているのか哲司は知らなかった。
教えても呉れないし、聞こうとも思わない。
ただ、毎日、同じ時刻に出かけて、同じ時刻に戻ってくる。
決して男前でもないし、背も高くは無い。
母親もそうだ。
確かに料理や洗濯はしてくれるが、兎に角文句が多い。
日に何とそれを聞かされていることか。
化粧はしているが、どう贔屓目に見ても美人だとは言えない。
それに、ぶくぶく太ってきている。
その両親が「もっと頑張れ」と言うのだ。
父親も母親も、頑張ってきて、その結果としての「今」があるのだろうか?
それとも、自分たちは頑張れなかったから、子供の哲司には頑張らせようとしているのか?
その点は、大いに疑問だと思う哲司だった。
(つづく)