表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
650/958

第7章 親と子のボーダーライン(その249)

「そ、そうだねぇ・・・。

ボクちゃんに、そんなことを言っても始まらないかもねぇ・・・。」

お婆さんは、溜息をひとつ付いてからそう言った。

難しいことを言ったとの思いがあるようだった。


「・・・・・・。」

哲司は黙ったままで、頭を横に振った。

決して、難しい話をされたという感じはなかったからだ。

ただ、今の哲司の立場では、素直に「そうだね、両親には感謝しなくっちゃ」とは言えなかっただけだ。



学校でも、「親に感謝をする」なんてことは、道徳の時間に出てくる教科書ぐらいだった。


確かに、親の力なくしては子供は生きてはいられない。

衣・食・住のすべてを親から与えられているのだ。


それでもだ。

子供の立場から言えば、「それは当然」という思いもある。



哲司もそうだが、子供は自分の意思で生まれてきたのではない。

よく「生んでくれって頼んだわけじゃない」っていう言葉が荒れた家庭を象徴するように言われるが、大なり小なり、哲司にもそうした思いがあるのは事実だった。


「どうして、こんな点しか取れないの? もっと、勉強しなさい。」

テストが返されるたびに、そう言われる身にもなってみろって思う。

自分ではそれなりに頑張っているつもりなのだ。

ただ、如何せん、理解力と記憶力に欠点があるようだ。

いくら時間をかけても、覚えられたないし、理解できないのだ。


「じゃあ、どうすれば良い?」

その問いに、親は答えてくれない。

ただ、ひたすら「もっと勉強しなさい」と言うだけだ。

だから、返されたテストを見せなくなるのだ。

結果が目に見えていたからだ。


哲司は、体育の実技だけは良い点が取れる。

だからと言って、別に努力をしている訳ではなかった。

練習なんかも一切してはいない。

それでも、同学年でトップ5に入る結果は残せた。


それと同じで、人間には「持って生まれた能力」ってのがあると思う。

だから、勉強の出来る奴は、殆ど苦労しないでも満点に近い点数が取れる。

そうした能力がたまたま自分には備わっていないから、いくら勉強をしようとしても、時間ばかりを食って結果が残せない。

つまりは、そのように生んだ親の責任じゃあないのかと・・・。


事実、殆ど毎日哲司と一緒に放課後を遊んで暮らしている龍平は、すべての教科でトップレベルにいる。

とても、隠れて猛勉強をしているとは思えない。

やはり、持って生まれた能力の違いなんだろうと思うしかなかった。



(つづく)




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ