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第7章 親と子のボーダーライン(その242)

「8歳、誕生日が来たら9歳になるけれど・・・。」

哲司は意識してそう答えた。

それでも、数えで幾つだとはカウントできなかった。


「ほうほう、そうかいそうかい・・・。

で、夏休みで、爺ちゃんのところへ遊びに?」

お婆さんは哲司と話せるのが嬉しいようだ。

にこにこしながら言ってくる。

その横で、丸子ちゃんが暇そうな顔をしている。



「う~ん・・・、遊びにってことじゃあないけれど・・・。」

哲司は、そんなに気楽なものではなかったように思う。

隣村にある親戚の家で、誰かの法事があった。

それに参加をする母親に連れてこられたのだ。


母親は数日間、実家である祖父の家にいる予定だった。

それを聞いた父親が、「だったら哲司を連れて行け」と言ったのだった。

残されると、自分が食事などの面倒を見なくては行けなくなるからだろう。

父親にはそんな力量はなかった。

家では何も出来ない。すべて母親任せだった。


そんな経緯だったから、母親が戻る時には哲司も一緒に戻る予定だった。

それなのに・・・。


「爺ちゃんに、竹笛を作るの教えてもらっているんだ。」

哲司は、辿り着いた答えだけを口にする。


「ほうほう・・・、竹笛をねぇ・・・。そう言えば、婆ちゃんも、昔は竹籠を作ってたよ。

冬場だけだったけどね・・・。」

お婆さんは、まるで編み物でもするかのように、宙で指を動かした。



「お婆ちゃんにも、孫っているの?」

哲司が訊いた。

いるのであれば、今の自分と同じようにここに来て上げれば良いのにと思ったりする。


「ああ・・・、3人いるよ。」

「ええっ! さ、3人も?」

「ああ・・・。」


「遊びに来る?」

哲司はあくまでも自分と重ねている。


「いいや、もう来ないねぇ・・・。皆、20歳を超えちゃったからね。」

「ええっ! そ、そんなに大きいの?」

「小さいときには、よ~く来てたんだけどねぇ・・・。

もう、来ないだろうねぇ。

次に来るのは、婆ちゃんが死んだときだろうね。」

「そ、そんなぁ・・・。」

哲司は、飲みかけていたジュースが喉に詰まりそうになる。


「いや、それでも来ないかもしれんなぁ~。」

お婆さんは、さすがに淋しそうに言う。



(つづく)




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