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第7章 親と子のボーダーライン(その239)

その哲司の声に、丸子ちゃんが小さな舌をペロッと出した。

そして、自慢げな顔をする。

「ちゃんとやれただろ?」とでも言っているようだ。



哲司が冷蔵庫を開ける。

中に入っているものはそんなに多くはなかった。

哲司の家の冷蔵庫と比べると、1/3ぐらいだろうか。

それでも、ちゃんと整理されていて、どこに何があるのかが一目瞭然になっている。


(ああ・・・、ヘルパーさんって人がやってるんだろうな。)

哲司はそう思った。

あのお婆ちゃんがここまで来てやれる筈もない。


扉の裏側にあるポケットのところに、ペットボトルに入ったオレンジジュースがあった。

哲司はそれを取り出した。

他にジュースらしきものがなかったこともある。


「ええ~と・・・、コップは・・・。」

そう呟いて周囲を見渡す。

見ると、食卓の上にコップが伏せる状態で5個ほど並べてあった。


(これ、使っても良いんだろうな?)

そうは思ったものの、他の手は思いつかないから、そこにあったコップをふたつ手にする。

そして、そこに冷蔵庫から出したジュースを半分ぐらいまで注いだ。


そうしておいてから、ペットボトルを冷蔵庫に戻す。

そして、今度は冷凍庫のところにあった氷を取り出した。


ここで、哲司は少し考える。

自分の分は氷を入れたい。

でも、お婆さんの分はどうなのだろうと。

祖父が、殆ど氷なるものを口にしなかったからだ。

「腹が冷えるからな」と言っていた。

そのことが頭にあった。


で、結局はひとつのコップにだけ氷を入れ、もうひとつのコップには何も入れなかった。

そうして、そのふたつのコップを持って、お婆さんの元に戻ろうとする。


「丸子ちゃん、行くよ。」

哲司がそう声を掛けると、丸子ちゃんはまた先導するようにしてお婆さんの傍へと案内をしてくれる。



「はい。お婆ちゃんにも入れてきたけれど・・・。」

哲司は、両手に持ったコップをお婆さんに見せる。

そうすれば、お婆さん自身が選んでくれるだろうと思ったのだ。


「ああ・・・、ありがと、ありがと・・・。」

お婆さんは拝むようにしてから、哲司が持っていたコップのひとつを手にした。

やはり、氷の入ってない方だった。


「よ~く、気がつくねぇ、ボクちゃん。」

お婆さんは、そう言って哲司を褒めてくれる。

いまだに名前を覚えてくれていないようだ。



(つづく)




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