表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
639/958

第7章 親と子のボーダーライン(その238)

「え~と・・・、ボクちゃん、名前はなんてたっけ?」

お婆さんが訊いてくる。

どうやら、哲司の名前が出てこないようだ。

おじさん警察官がちゃんと紹介してくれたのにだ。


「僕は、巽哲司。」

「ああ、そうそう、哲司君だったね。ご免よ。

婆ちゃんぐらいになると、なかなか、名前が覚えられなくってね。」

「ううん・・・、良いけれど・・・。」


「喉乾いたろ? ジュースでも飲むかい?」

お婆さんが気を遣ってくれる。


「ううん、大丈夫だよ。」

哲司は遠慮をした。

寝たっきりのお婆さんに、そんなことをさせられないし、出来ないだろうとも思ったからだ。


「まあ、そんなことを言わないで・・・。

丸子や。」

お婆さんの呼びかけに、丸子ちゃんがお婆さんの顔をじっと見る。


「丸子や、“レ・イ・ゾ・ウ・コ”に行って。」

お婆さんが丸子ちゃんに言った。

“レ・イ・ゾ・ウ・コ”と、区切ってだ。


すると、丸子ちゃんは、すくっと立って、そのまま歩き始める。


「ボクちゃん、丸子の後ろを付いて行ってやって。

で、冷蔵庫の中に入ってるジュースを出してきて。」

「う、うん・・・、分かった。」

哲司もお婆さんの言葉に従うことにする。

既に丸子ちゃんが廊下で待っていてくれたからでもある。



哲司が廊下に出る。

すると、丸子ちゃんはそれを確認して、ゆっくりとその先に進んでいく。

時折、立ち止まっては哲司を振り返ってくる。

何とも賢い犬だ。


で、台所に入った。

哲司の祖父の家のそれよりも一段と広い感じがした。


「クイーン。」

丸子ちゃんが小さく鳴いた。

そして、その場でちょこんと正座をする。

そこは、まさに冷蔵庫のまん前だった。


「ありがとう。」

哲司は思わずそう言った。

初めて丸子ちゃんに声を掛けたことになる。



(つづく)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ