第7章 親と子のボーダーライン(その212)
「哲司もそこに座れ。」
祖父がそのタイミングで言ってくる。
「う、うん・・・。」
哲司は縁側に腰を下ろした。
「ほい、哲司にはこれだ。」
祖父がグラスを差し出してくる。
そのグラスには黄緑色をした液体が半分程度入っていた。
「ん? これは?」
「ジュースだ。飲んでみろ。」
祖父にそう言われて、恐る恐る一口口に入れてみる。
「うへっ! に、苦い・・・。」
「ん? 苦いか?」
「う、うん・・・。」
「そうか、哲司のために蜂蜜まで入れてやったのになぁ・・・。」
「こ、これ、本当にジュースなの?」
「ああ、いろんな野菜がたっぷり入ったジュースだ。
文句言わずに飲め。」
祖父は、そう言いながらも、自分も同じジュースらしきものを飲んでみせる。
それも、一気にだ。
「た、確かにな、決して美味いものだとは言えんだろうが・・・。
昔から、“良薬、口に苦し”と言うからなぁ・・・。」
祖父は口の中でその味を確かめるようにして言う。
「あはは・・・、それ、アロエのジュースだろ?」
弁当を食べ始めたおじさん警察官が言う。
「飲むか?」
「いいや、遠慮しとくよ。」
「折角の愛妻弁当だしなぁ、その邪魔をしてはいかんか・・・。」
「わっははは・・・。」
「おお、そうだ。丸子ちゃんにお土産があるんだ。
持って行ってやってくれるか?」
祖父が思い出したように言う。
「ああ、もちろんだ。この後、チヒロ婆さんのところにも寄る予定だしな。」
おじさん警察官がお茶を一口飲んでそう言った。
祖父が、テーブルのところに戻って、食べ残した握り飯を小皿に移し替えている。
「丸子ちゃんって?」
哲司がおじさん警察官に訊く。
初めて聞く名前だったが、ちゃん付けで呼ばれていたことから、きっと女の子なのだろうと思ってのことだった。
「ああ、とっても可愛い女の子でな・・・。」
おじさん警察官は、箸を持ったままでにっこりと笑った。
(つづく)