第7章 親と子のボーダーライン(その194)
魚がいろいろと加工されて、食べ物になっているというのはある程度知ってはいた。
蒲鉾や竹輪がそうだと教えてもらったように記憶している。
つまりは、すり身にして作られるらしい。
それでもだ。あのふわふわとしたかつお節が、もともと魚だったとは・・・。
どう考えても結びつかない。
強いて言うならば、植物だと言われた方が納得しやすい。
大工さんが修繕にやって来たときに見たカンナクズにそっくりだったからでもある。
「名前からして、ちゃんと鰹って名前が付いてるだろ?」
祖父は、哲司が信じられないと言う顔をしたことに、逆に驚いた風にする。
祖父にすれば「常識中の常識」なのだろう。
「そ、それは・・・、そうだけど・・・。」
哲司にすれば、その名前がまさか魚の“かつお”だとは思っていなかった。
「じゃあ、哲司は、削る前の鰹を見たことが無いのか?」
「ん? 削る?」
「ああ、そうだ。鰹を削って、鰹節を作るんだ。
昔は、各家でその日に使う分だけを削ったもんだが・・・。」
「・・・・・・?」
そう言われても、哲司にはまったく想像も付かない。
魚を削るという発想が出来ない。
「よし、だったら、それも後で見せてやろう。
何だったら、削らせてやっても良いぞ。」
「ええっ! ぼ、僕にも出来るの?」
「ああ、簡単なことだ。コツさえ掴めればな。昔は、子供が良くやっていたことだ。
一度やってみると良い。何でも、経験だ。」
「う、うん・・・。」
そうは言うものの、哲司には、それが自分に出来るとは思えなかった。
どうしてなのかは自分でも分からない。
「もう1個食べても良い?」
哲司は、そのオカカの握り飯を食べ終わって言う。
「ほどほどにしろ」と言った祖父の言葉が頭にあってのことだ。
「ああ、食って良いぞ。」
祖父も、それ以上のことは言わなかった。
そして、自分も、また次の握り飯に手を伸ばす。
哲司は、祖父が何の握り飯を持って行ったのかが気になる。
そして、自分が次にどれを食べようかと残っている握り飯を物色する。
「ほんと・・・、いろんなのがあるんだねぇ・・・。」
哲司の本音である。
これで4つ目を平らげたが、それでもまだ食べてはいない味がそこにありそうな気がするのだ。
「全部で、7種類ぐらいかな? で、3個ずつぐらい握ったからな。」
祖父がそう明かしてくる。
「そ、そんなに・・・。」
「だとしたら、この皿には、一体幾つの握り飯が乗ってたんだ?」
祖父は、算数の問題に置き換えるようにして訊いてきた。
(つづく)