表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
584/958

第7章 親と子のボーダーライン(その183)

台所に行くと、「おい、こっちだ」と声が掛かった。

祖父が哲司を傍に呼ぶ。


「いつも食べてるのはこれぐらいか?」

祖父が、子供用の茶碗にご飯を入れたものを見せる。


「う、うん・・・。それぐらいだと・・・。」

「じゃあな、よく見てろ。」

祖父はそう言ったかと思うと、その茶碗をひっくり返すようにして、ご飯を片掌の上に開けた。

そして、もう片方の掌を添えるようにして、器用にそのご飯を丸めるようにする。


「梅干を入れるか。」

そう言って、小さな梅干を1個、その掌の中へと放り込む。

そして、その梅干を包み込むようにして握っていく。


何度が手首を返すようにして握ったかと思うと、哲司に向かって言ってくる。


「手を出しな。」

「こ、こう?」

哲司が両掌を揃えて差し出す。

祖父が、その掌の上に握り飯を1個乗せた。

綺麗に三角形をしている。


「へぇ~、お爺ちゃん、上手・・・。」

「ほらな・・・。」

「ん? 何が?」

「子供用の茶碗1杯で、それぐらいのおにぎりが出来るんだ。」

「ああ・・・、なるほど・・・。」

哲司は、祖父が、先ほど言ったことを目の前で証明してくれたのだと思った。


「どうだ。納得したか?」

「う、うん・・・。」

「哲司は、それを5個は食べるだろ?」

「今日は、もっと食べられるかも・・・。」

「そ、そうか・・・。良いぞ。6つでも7つでも。」

祖父は楽しそうに笑った。


「これから食べても良い?」

哲司は、今渡された握り飯を両手で持って訊く。


「ああ、そうしろ。」

ふたりは、朝食を食べたテーブルのところへと座る。



テーブルには、中央に大きな皿がひとつだけど~んと置いてあって、後は湯呑と手布巾が両脇に乗っているだけだった。


「わぁ、凄い!」

哲司は、その大皿の上に乗った握り飯の山に驚いた。

優に、20個ぐらいはあるだろう。


「だから言ったろ? 好きなだけ食べろって・・・。」

「う、うん・・・。じゃあ、頂きます。」

哲司は、手にしていた握り飯にかぶりついた。



(つづく)





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ