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第7章 親と子のボーダーライン(その178)

「本当は、“およつ”と“おやつ”だったんだな。」

祖父がまた哲司の頭が混乱するようなことを言う。


「およつ?」

「ああ、“およつ”と“おやつ”だ。」

祖父は、まるで哲司の反応を楽しむかのように悪戯っぽく笑う。


「いいか? 手を止めないで聞けよ。」

「う、うん・・・。」

哲司は、ふと止まりかけた作業の手を再び動かし始める。


「さっき、昔の時刻の呼び方を話したよな?」

「う、うん。」

「哲司にゃあ、もうひとつピンと来なかったろ?」

「う、うん・・・。」

哲司は、チラッと祖父の顔を見る。

祖父は、そう話ながらも、その目はちゃんと哲司の手元に注がれていた。


「今で言う12時を“ここのつ”と言った。

で、2時間ごとに“ひとつずつ”減らしていくんだったな?」

「う、うん・・・、確かそんなだったような・・・。」

哲司はやはり自信は無い。


「だったら、午後の2時はいくつだ?」

「・・・・・・。」

哲司は手を止めて考える。

田舎に来てまで、算数の暗算をすることになるとは思わなかった。

それでも、何とか頭を巡らせる。


「2時間ごとにひとつ減らすんだから、“やっつ”?」

何とか答えらしきものを搾り出す。


「ああ・・・、ちゃんと計算出来るじゃないか。そうだ、大正解だ。

じゃあな、もう1問だ。」

「・・・・・・。」

正直なところ、哲司はもう出題はされたくなかった。

折角、何とか1問正解したのに・・・と思う。


「じゃあな、午前の10時は幾つになる?」

「・・・・・・・・・・・・。」

哲司は、頭の中に時計の文字盤を思い浮かべて計算しようとする。


「あっ! “よっつ”かな?」

何となく、文字盤で数えたらその答えが出た。


「おおっっ! 凄いな。出来たじゃないか。大正解だ。」

「・・・・・・。」

哲司は、苦しさから解放されてほっとする。


「だから、“およつ”と“おやつ”なんだな。」

祖父は、また同じ言葉を繰り返した。


「ん? ど、どういうこと?」

哲司は、とうとう完全に手を止めてしまう。



(つづく)




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