第7章 親と子のボーダーライン(その168)
「へぇ~・・・。」
哲司は、それでも信じられない。
確かに、父や母がいて自分がいるということは、何となく実感がある。
そして、その母親が、この祖父の娘だったのだから、祖父がいて自分がいるということまでは、これまた現実感がある。
だが、正直言って、そこまでが限度だった。
それ以上は遡れない。
たまに、テレビなんかで、「先祖は誰それで、そこから数えて何代目だ」などと言う人がいるのは知っている。
それを見て、「凄いんだ」と思った記憶はあるが、自分にもそうした何十代も前の先祖が存在したとは思えなかった。
「爺ちゃんの家も、家系図が残されているほどの名門じゃないが、それでも、爺ちゃんの父さん、そのまた父さん、そのまた父さん・・・と遡っていける筈なんだ。
そうだろ?」
「う、う~ん・・・。」
「誰だって、そのお母さんのお腹から生まれてくるんだ。
桃太郎じゃあるまいし、桃の中からは生まれたりはしない。
ってことは、人間である以上、誰だって親がいる。
お父さんがいて、お母さんがいて、この世に生まれてくるんだ。
これは、分かるよな?」
「う、うん・・・。」
祖父にそう言われると、哲司も頷かざるを得ない。
確かに祖父が言うとおりだと納得をする。
「だったらな、さっきも言った、ちょんまげの時代に哲司や爺ちゃんのご先祖様が、どこかでこうして誰かと話したり、ご飯を一緒に食ったり、おやつを抓んだりしていた筈だよな?」
「う、うん・・・、確かに・・・。」
「もっと昔の原始時代にも、哲司のご先祖様はちゃんと生きていたんだ。
何処かの山で、熊や猪を獲って食べてたかもしれないし、何処かの洞穴で寝起きして、哲司の好きなマンモスや恐竜を追っかけていたかもしれないんだ。」
「えっ! 恐竜を?」
「ああそうだ。恐竜がいた時代にも、ご先祖様は生きていたんだからな。
そう考えると、ワクワクしないか?」
「う、うん・・・。」
「きっとな、その頃のご先祖様は、こうした井戸も知らなかっただろうし、川の水を使ったり、雨水を溜めて飲んでたりしたんだろうな。」
「・・・・・・。」
「恐竜やマンモスは全滅してしまって、今はもういない。
それなのにだ、人間だけは、こうして地球上に生きている。
身体の大きさや力はとても敵わなかった筈なのにだ。」
「そ、それは、どうして?」
「う~ん、やっぱりここだな。」
祖父は、また頭を指差して笑った。
(つづく)