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第7章 親と子のボーダーライン(その160)

「・・・・・・。」

哲司は、半分は呆気に取られる。


この井戸からつるべで水を汲み上げても、それを離れたところにあるタライに入れる方法が分っていない。

「どうするんだ?」と祖父は指摘していた。

その答えを教えてくれないうちに、「さあ、頑張れ」と言われても、そうそう力が出るものではない。



「ほら、どうした? 手が止まったまんまだぞ。」

土間の方から祖父の声がする。

哲司が慌ててつるべについているロープを引っ張る。


まずは1杯目を汲み上げる。

そして、そのつるべを井戸の脇にそっと置く。

折角汲み上げた水だ。少しでも溢したくはなかった。

「神様から貰った水」という祖父の言葉が頭の端を掠めていく。


「ほら、バケツだ。あまり大きいと運べないだろうから、小さめのポリバケツを探してきてやった。」

祖父がそう言いながらやってくる。

手には、青色のポリバケツと太い竹を持っていた。


「こ、これは?」

傍にバケツを置かれた哲司がそう訊く。

その使い方は想像できたものの、それと断言されたくなかった。

このバケツで汲み上げた水を運ぶことになるのだろうとは思っていた。

もう少し、楽な方法は無いのだろうか? と思ってのことだった。


「要らないのなら、片付けてくるが・・・。」

祖父は、痛いところを突いて来る。


「い、要るよ。これで、水を運ぶんだろ?」

「分かってるんだったら訊くな。」

祖父はそう言ってにやりと笑った。


「で、その太い竹は?」

話題を逸らせたくって、哲司がそう訊く。

これは、何のために持って来られたのかが分からなかったからでもある。


「さあな、何に使うんだろうな?」

祖父は、まるでテレビのクイズ番組の司会者のような言い方をする。


「ん?」

ということは、今やっているこの作業に関係があるのか?

哲司はそう感じた。

別に明確な根拠は無かったが、祖父がそうしてバケツと一緒に持って来た以上は、何らかの意味があるものだと思えたからだ。


「ここを使え。」

祖父は、薄くなった頭を指差して笑う。

そして、そう言い終わると、またさっきの石の上にドンと腰を下した。


「さあ、頑張れ!」

祖父は頷きながらそう言ってくる。



(つづく)



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