第2章 奈菜と出会ったコンビニ(その14)
「・・・・・・・」
哲司は、むすっとした顔をしているのだろうと自分でも思う。
店長のほうから「珈琲でも・・」と誘ってきたのだ。
おまけに、奈菜からは「私が頼んだの」という言葉まであった。
そうでなければ、ここには座っていない。
そんな思いがある。
それなのに、奈菜とはまったく関係のない火事の話や、オヤジさんの話まで持ち出して、一体どういうつもりなのだ?
本当は「だったら帰ります」と言って席を蹴りたいのだが、あのコンビニにはこれからも顔を出したいし、例の釣銭事件の時には、おまけまでもらっている。
そういうことがあって、今しばらくは我慢をしようと自分を抑えている。
「実は、その火事で僕の姉が死にましてね。・・・・」
店長は、窓から自分の店を見やってそう話す。
哲司は溜息が出そうになる。
「おいおい、今度はお姉さんの話かい。」
「奈菜ちゃんはね、その姉の娘なんです。
つまり、僕の姪っ子なんですよ。」
「えっ!・・・・」
哲司は、突然に言われた言葉の意味がすぐには飲み込めなかった。
そこにマスターが珈琲を運んでくる。
「私の孫なんです。」
考えれば、当然の関係なんだけれど、次々に予想しない事を言われるから、その都度「えっ!」と驚きの声が上がる。
「ああ・・・・、そうだったんですか・・・・・。」
哲司は、自分に対して奈菜のガードが固いなと思っていたから、今の話でそれなりの理解は出来た。
「つまり、奈菜ちゃんは、おじさんの経営されるお店でバイトをしてたってことなんですね。」
それで、奈菜が「私から頼んだの」という意味が少しだけ分る。
「たまたま、姉親子が実家に遊びに来てたときにその火事になってしまって。
姉だけが逃げ遅れて・・・・。」
「ということは、その火事の時、奈菜ちゃんもそこにいたということですか?」
「はい、そうです。
同じ2階で寝ていたんですが・・・。」
そこまでで、店長は話しづらそうな顔をして見せた。
哲司は、感覚として、そこで何かがあったのだろうな、という思いはしたものの、当然にこちらからは言葉を挟めない。
ただ黙って店長の顔を見る。
「あの子ね、自分だけが助かって、隣の部屋の母親が死んでしまったってことに大層ショックを受けましてね。」
今度はマスター、いや、奈菜の祖父が言葉を繋いだ。
(つづく)