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第7章 親と子のボーダーライン(その155)

「ああ、いろんな方法を考えてみたか? そういうことだ。」

祖父は、腕組をしたままで哲司のすることを眺めている。

顔は笑っているが、どうしてか、目だけは笑っていない。


(くっそ〜・・・。)

哲司は、口の中でそう呟く。


その方法を知っているのなら、教えてくれたって良いじゃないか。

そう思っている。

その方が手っ取り早いだろう。

日頃はここで生活をしていない俺に、急に、ここでの知恵を出せと言われても、そうそう簡単に出てくるものではない。

そのことは、爺ちゃんが一番知ってる筈だ。

それなのに、どうしてそんな意地悪をする?

時間ばかり食って、それこそ無駄だろ?



「哲司よ。水はどこにあるんだ?」

祖父は、まるで学校の教師のような訊き方をしてくる。


「ん? どこにって・・・。」

「だからな、そのタライに入れる水は、どこから持ってくるんだ? ってことだ。」


「ど、どこからって・・・。」

「その蛇口からか?」


(そ、そうに決まってるだろ?)と哲司は思う。


「じゃあ、その蛇口の中に、あのタライを一杯にするだけの水が入っているんだな?」

「ん?」

哲司は、祖父が言っていることの意味がよく分からない。

蛇口の中に水が入っているのではなくって、その蛇口を捻れば水が出てくるってことなのだが・・・。


「蛇口に入っているんじゃなくって・・・。」

「だろ? だったら、その蛇口から出てくる水は、今はどこにあるんだ?」

「どこにって・・・。地下?」

哲司は、この蛇口から出てくる水は、井戸に通じる地下水をポンプで汲み上げたものだということだけは知っていた。

だから、そんな答えになった。


「おお、よく知ってるんだな。」

「で、でも・・・。」

哲司は、それが分かったからと言って、タライに水を張れなければ何にもならないと思う。


「じゃあ、その地下の水をそのタライに入れるんだな?」

「そ、そういうこと・・・。」

「だったら、以前に哲司も、やったことがあっただろ?」

「ん? 以前に?」

「・・・・・・。」

祖父は、黙ったままで井戸の方向に視線を向ける。

その視線の先にあるものを哲司に教えるかのようにだ。


哲司が、祖父の眼線を追う。



(つづく)




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