第7章 親と子のボーダーライン(その153)
「何時頃起きたんだ?」
祖父が、哲司が使っていたバスタオルを片付けながら言ってくる。
「う〜ん、ついさっき・・・。」
「そ、そうか・・・。よく寝てたなぁ。」
「う、うん、お腹一杯になってたから・・・。」
「あははは、腹の皮が張ると目の皮が弛むってな・・・。」
「ん?」
哲司は、祖父が言っている意味が分からなかった。
「お腹が一杯になると、誰でも眠たくなるってことだ。」
「ああ・・・、そうなの・・・。」
「それはそうと、哲司、他の宿題は?」
「あるよ。一杯。」
「持ってきてるのか?」
「ううん、すぐに帰る予定だったし・・・。」
「そ、そうか・・・。どの程度できてるんだ?」
「殆ど・・・。」
「ん? 殆ど終わってるってか?」
祖父は、そんな筈は無いのだろうと言う顔をしている。
「殆ど出来てない。」
「おう、だったら、工作を早く作って、早く帰らないとな・・・。」
「い、良いんだよ。どうでも・・・。」
「・・・・・・。」
祖父は、その哲司の言葉には何も答えなかった。
「じゃあ、テレビを消して。で、その竹、井戸のところへ運んで。」
「あ、は〜い!」
哲司は、祖父が宿題のことについて特に何も言わなかったことを嬉しく思った。
家で父親とその話題で話せば、必ず強い言葉で叱られていた。
哲司が竹を抱えて裏庭の井戸まで行く。
そして、そこで祖父が来るのを待った。
数分して、ようやく祖父がやってくる。
家の中で誰かと話すような声が聞こえていたから、多分何処かへ電話を掛けていたようだ。
「よ〜し、そのタライに水を張って。」
祖父が哲司に指示してくる。
「ど、どうしたら?」
哲司は、言われたことは分かったものの、そうするための方法が見つけられない。
タライはかなり大きなものだ。哲司が入って横になれるぐらいだ。
で、井戸水を汲み上げた蛇口は、手洗い場のところにしかない。
「さてさて、哲司はどうするかな?」
祖父はその答えを教えてくれるつもりは無いらしい。
自分で考えろということのようだ。
哲司は周辺を見渡した。
(つづく)