第7章 親と子のボーダーライン(その152)
「どうした? そんなところに突っ立って・・・。」
突然、背後から祖父の声がする。
「わおぅ! び、ビックリしたぁ・・・。」
「あははは・・・。」
「ど、どこにいたの?」
哲司は、祖父が家の何処かに隠れていたように感じたのだ。
どこからか帰ってきた気配もしなかった。
「哲司が寝てると思ってな・・・。そっと、裏から入ってきた。」
祖父はそう言ってにっこりと笑う。
「ああ・・・、そうだ。これ。」
哲司は、先ほどの郵便屋から預かった薄っぺらい紙を祖父に渡す。
「ん? ああ、松ちゃんが来たんだな?」
「まっちゃん?」
「ああ、郵便局員だったんだろ?」
「う、うん。」
「おう、書留か・・・。また来るんだろ。」
郵便屋が残して行ったのは、書留郵便を届けに来たが、不在だったのでというお知らせのようだった。
「それはそうと、これ。」
祖父は、手にしていた竹を哲司に渡してくれる。
結構長いものが4〜5本ある。
「ん? あ、ありがとう。でも・・・、これ、皆枯れているよ。」
「あははは・・・、枯れてるのが良いんだ。とりわけ、笛を作るにはな。
後でいいから、それ、枝を払って、井戸水で洗っておきな。」
「枝を払う?」
哲司は、その意味が分からない。
「そ、そうだな。それも後で教えてあげるから・・・。」
祖父は、通じない孫との会話が楽しいらしい。
「お爺ちゃん、どこに行ってたの?」
哲司は、祖父がこの竹を採りに行ってくれたのは分かったものの、一体どこに行ってたのかが分からない。
ほんのちょっぴりだが、淋しい思いをしたからこそ聞いておきたかった。
「裏山だ。歩いて30分ぐらいのところだ。でも、どうして?」
「ううん、別に・・・。」
「別に・・・か・・・。」
祖父は、哲司の顔を覗き込むようにして笑う。
(つづく)