第2章 奈菜と出会ったコンビニ(その13)
「一体、何をどうしろって頼んだの?」
そこのところが、その肝心な部分が聞けてない。
哲司はその客のレジか終わるのを待つつもりだった。
だが、不思議な事に、次から次へと客が並び始めた。
タイミングが悪かった。
少し様子を見ていたが、とてもじゃないが話しができそうにはない。
向いの喫茶店の窓から、店長が待っているのが見える。
もう、待たせられないだろう。
哲司は奈菜からの話を訊くことを諦めて、その足で店を出た。
もちろん、喫茶店へ行くつもりではある。
「何にする?」
座ると、店長が訊ねる。
「ホットを。」
哲司はそれだけを答えた。
別段、珈琲が飲みたいわけではない。
ただ、そうでもしないと、この場に座れないような気持がする。
「じゃあ、珈琲2つ。」
店長はカウンターの向こうにいるマスターらしき初老の男に直接声をかける。
「あいよ。」
その初老の男がそう答える。
どうやら、2人は顔なじみのようだ。それだけで通じている。
店長は、年齢は40代半ばぐらいだろう。
少し頭が後退しているから、実際の歳よりは老けて見えるのかもしれないが、少なくともこの店のマスターらしき男性とは明らかに年代は違う。
「あれが僕の親爺なんですよ。」
店長はぽつんとそう言って、煙草を取り出した。
「吸いますか?」
「いいえ。」
差し出された煙草をそう言って哲司は退けた。
煙草は吸わないのだ。
「今の店ね、実は親爺が建てた家があった所なんです。」
店長がそんな話をし始める。
哲司は多少苛立ってきた。
そんな事を聞く為にきたのではない。
だが、店長はお構い無しに話を続ける。
「もう5年ほど前ですが、火事になりましてね。
あっという間に全焼ですわ。」
哲司が今のアパートに入居する以前の出来事である。
(つづく)