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第7章 親と子のボーダーライン(その120)

「忘れましたって・・・、嘘を付いたの。」

「ど、どうして?」

「だ、だって・・・。持ってきましたって言ったら、哲ちゃんの机から離されるんだもの・・・。」

「あ、当たり前・・・。」

哲司は、そこまで言って、ようやっと気が付いた。

そう、まさに鈍感なのだ。

龍平が言うとおりなのだ。


「・・・・・・。」

その後は、口がパクパク・・・。まるで酸素不足の金魚鉢に入れられた金魚のようにだ。

改めて、美貴の顔を見る。

その美貴の顔も少し紅潮していた。



「そろそろ腹が減ったなぁ〜。なぁ、哲司もそうは思わない?」

その場の空気を読んだのだろう。龍平がかき回すように茶化して言う。


「そ、そうね・・・。そろそろ、夕飯だし・・・。」

「じゃあ、下に行く?」

「そ、そうしましょう・・・。」


で、3人は、その美貴の部屋を出ることになる。


まずは龍平が部屋を出て、中で呆然としていた哲司の腕を引っ張るようにする。

そして、最後に美貴が部屋を出る。

電気を消して、そしてドアを閉め、さらにはそこに施錠をする。


哲司は思考が止まったようになっていた。

気が付いたら、足の下にある筈の床が無かった。

そう、階段のところまでやってきていたらしい。

その最初の一段を踏み外しかけた。


「お、おっと!」

その声と共に、ようやく我に返る。


「おいおい、哲司、しっかりしろよな。」

後ろから来ていた龍平が哲司の肩をポンと叩く。

ただ、彼には、今の哲司の状況がよく分かっていたようだった。

そう、ショック状態から抜けられていない。



美貴に案内されて、ダイニングに入った。

同じダイニングと言っても、とても自分の家とは比べようが無いほどに広い。

どこかの大広間にでもやって来たような感覚が哲司にはあった。


「やあやあ、本日のヒロインのご登場だな・・・。」

そう言ったのは、どうやら美貴の父親らしかった。

座っていたソファから立ち上がって、3人の方へと歩いてくる。


「龍平君、お久しぶり。で、こちらがかの有名な哲司君かな?」

父親らしき人物は、そう言って、龍平に、そしてそれに続いて哲司にと、それぞれ握手を求めてくる。


「よ、よろしく・・・です。」

哲司は、そうとしか答えられなかった。

それでも、握手を求められたことで、少しは落ち着きが出てきたような気もした。



(つづく)




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