第2章 奈菜と出会ったコンビニ(その10)
奈菜の方から携帯番号とアドレスをくれたのだから、その後は想像するに難くない。
哲司は喜び勇んで奈菜にメールを打った。
最初は、電話にしようかと考えたが、仮に店のバイトが終わった後の時間だとしても、移動中だとか、誰かと一緒だとかの理由で出ないこともあるだろう。
そうなったら、自分が落ち込むのが分っていたからメールにする。
安全策をとったつもりだった。
「お久〜♪
でも、ホント、ビックリしたよ
まさか、今日、あのコンビニで出会えるとは思っても見なかったし
第一、前、突然に辞めちゃったから、一体どうしたのかって心配してたんだ
でも、元気そうで、ホント良かったよ
それから、携番とメルアド、アリガトね
一度、ゆっくり、遊びにいこうね」
たったこれだけのメールを打つのに、哲司は1時間ほどを費やした。
こんなことも、初めてである。
そのメールを打ってからがこれまた長かった。
携帯電話はいつも肌身離さず持っている。
鳴ればすぐに分るはずなのだが、数分毎に着信の有無を確かめる事になる。
そのうちに、
「こいつ電池切れ?」
とまで疑ってしまう。
デジタル表示される「時刻」をじっと見つめて、点滅している事を確かめる。
それでも、また数分すると、同じことを繰り返す。
哲司がメールを送信してから40分ぐらいして、ようやくその返信が来た。
「ようやっと・・・」
哲司がメールを開ける。
「うん、心配かけてゴメン。それじゃ、また明日。」
「ん?・・・・・たった、これだけ?」
いくらスクロールをしても、奈菜からのメールはこれだけだった。
「失敗して、作成途中で送信したのかな?」
どこまでも、期待感が膨らんでいる哲司である。
そうして携帯を手に握り締めたまま、30分ほどが過ぎていた。
今、思い出しても、自分で可笑しく思う哲司である。
(つづく)