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第7章 親と子のボーダーライン(その114)

「こんばんわ。お招き頂きまして・・・。」

龍平はカッコよく、それこそカッコ良くそう返した。

哲司が知っているいつものやんちゃな龍平ではない。


「来てくれて、ありがとう。嬉しいわ。」

ミィちゃんは、白いワンピースのような服を来ていた。


龍平が哲司の尻をポンと叩く。

どういうつもりなのかは分からなかったが、それでも哲司はようやく口を開く。

「こ、こんばんわ・・・。」

そして、思いっきり唾を飲み込んだ。

ゴクリと喉が鳴ったようにも感じる。

これまた日頃見慣れた美貴ではなかったからだ。

学校で横の席から見る美貴とは別人だった。


「哲ちゃんも、本当にありがとうね。」

美貴は、はにかむようにしてそう言った。



「ささ・・・、どうぞ、お上がりになって・・・。」

奥から美貴の母親らしき女性が出てきて言う。

これまた、美貴に劣らぬ楚々とした美人である。

どこかの女優さんの家にでも来たような気さえする。


「龍ちゃん、お久しぶり。そして・・・、まぁ、あなたが哲司君?」

女性は哲司を上から下まで見るようにして、多少驚いた様子で確認してくる。


「あ、はい・・・。こんばんわ。」

「おばさんのこと、覚えてくれてる?」

「・・・・・・。」

哲司は、正直、返事に困った。

龍平や母親の話を総合すると、幼稚園の頃にはミィちゃんの母親にも会っているとのこと。

それでも、哲司にはその記憶が無かった。

もちろん、目の前にいる女性についても見覚えなどあろう筈も無かった。


「ママったら、そんな昔の事を・・・。」

哲司の様子を気遣ったのか、美貴がその会話に割り込んでくる。


「そ、そうね・・・。御免なさいね。」

「ねぇ、そんなところで固まってないで上がってよ。」

美貴がふたりの袖を引っ張るようにして言う。


「じゃあ・・・。」

そう言ってふたりはそこで靴を脱ぐ。

上がってから、龍平は振り返るようして自分が脱いだ靴の向きを変えて端の方へと寄せた。

それを見た哲司も、それに倣う様にする。

龍平のやることに間違いは無いだろうという確信がどこかにあったからだ。

内心では、「へぇ〜、こうするもんなんだぁ」という驚きを感じてはいた。



「ママ、おふたりを私の部屋にご案内しても良い?」

美貴がそのタイミングを捕まえて、そう切り出した。

哲司は、思わず母親の顔を見た。



(つづく)



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