第7章 親と子のボーダーライン(その103)
●読者の皆様、更新が遅くなって申し訳ございません。
昨日は、仕事の都合で僅かな執筆時間も確保できず、更新できませんでした。
出来る限り日々の更新を目指していますが、仕事が最優先ですので・・・。
これからも、どうぞよろしくお願いを致します。
誰でも子供の時にはそうなのかもしれないが、哲司も湯船にじっくりと浸かるようなことはしないタイプだった。
ものの10秒ぐらいで湯船から上がる。
(最初のお湯って、こんなに熱く感じるもの?)
哲司は、真新しい湯に浸かって、そう感じていた。
そして、すぐさま頭を洗いに掛かる。
シャワーもあるのだが、そんなものを取り出してくるよりいきなり桶で湯を被った方が早いと思うから、迷わずそうする。
2杯の湯を被ってからシャンプーを手にとって泡立てる。
そして、それを頭の髪にこすり付けるようにする。
いつもよりは丁寧に洗ったつもりである。
それでも、時間的には殆ど変わってはいない。
髪の毛も短いし、整髪料をつけているわけでも無いから、それこそ泡立てて何度か両手でゴシゴシやればそれですべてが終わる。
で、最後にまた湯桶に2杯ほどの湯を被ればそれでOK。
次は身体を洗う。
これもいつもと同じ手順だ。
ナイロン製のタオルにホディ石鹸を付けて、これまたゴシゴシとすれば適当に泡立ってくるから、それで身体を洗う。
顔もそのタオルで擦る。
強い力だと痛いと思うほどだが、自分でやる以上はその点は手加減をする。
で、上から順に身体を下りていくようにして、最後に足の裏を洗ってお仕舞いとなる。
「よ〜し! 終わった。」
哲司はそう声に出す。
これまたいつもの事だった。
こうしておくと、風呂から上がったときには、母親が冷たいジュースか何かを用意してくれているからだ。
「もうすぐ出ますよ」の意味もある。
で、最後にもう一度湯船に浸かってから風呂を出る。
これまた10秒ほどしか浸かってはいなかった。
「相変わらず、早いのねぇ。ちゃんと洗ったの?」
哲司が風呂から出たのを察知したのだろう。
母親がそう声を掛けてくる。
「ああ、ちゃんと洗ったよ。頭も洗ったし・・・。」
哲司はバスタオルで身体を拭きながらそう答える。
もちろんガラス戸越しにである。
「服を着たら、声を掛けてよ。」
母親がそのドアの傍まで来て言う。
「ど、どうして?」
「良いから、着たら言いなさい。」
「・・・・・・。」
哲司には訳が分からないが、どうやら母親は、この場に入って来るつもりのようだ。
ともかく、急いで服を着る。
(つづく)