第2章 奈菜と出会ったコンビニ(その7)
実は、そのスノボー旅行の話がでてから1年ほどが経っていた。
昨年の冬にその話があった。
兎も角も、哲司は有頂天になった。
「こんな恋人がいたらなあ〜」と思えるその本人から、一泊でスノボーをしに行こうと誘われたのだから、舞い上がるのは無理なかった。
だが、結果的には、2人はその冬、旅行には行けなかった。
当時、奈菜は高校2年生だった。
それで、冬休みを利用してコンビニのアルバイトをしていたのだった。
哲司は、スノボーの話に熱中する奈菜を見ていて、そのための小遣いが欲しいからバイトをしているのだと思っていた。
それで、たまたまスノーボードを抱えていた哲司に興味を抱いたと思った。
ところが、そうした旅行の計画の詳細が決まらないうちに、ある日突然に奈菜はコンビニのバイトをやめてしまった。
哲司には訳が分らなかった。
別に奈菜と喧嘩をしたような事もなかったし、第一、その時点ではそこまで親しくはなっていなかったのだ。
スノボー旅行をきっかけにして・・・と考えていた哲司は出鼻を挫かれた形になる。
店長に訊いてもその理由は知らないと言う。
バイト上でのトラブルなどはなかったそうだ。
「今時の高校生ってのは、気まぐれだしなあ。何を考えているのか、さっぱり分らんよ。」
店長は、そうも付け加えた。
「だったら、携帯電話の番号を教えてもらえないですか?」
と哲司は初めて店長に直訴した。
店長も、ふたりがあの釣銭事件の後、急速に仲良くなっていることを知っていたから、何とかしてくれるのでは、との希望的観測もあった。
だが、店長は「規則だから」との建前論だけで、哲司の要求には答えてくれなかった。
まあ、当然といえば当然なのだが。
それから、哲司はまたまたカップ麺を買い込んで篭城する生活に逆戻りをした。
コンビニにも、カップ麺を纏め買いするとき以外は、滅多に顔を出さなくなった。
買い物があるときでなければ、行く必要もなくなっていた。
そして、数ヶ月が過ぎ、高校生は春休みに入った。
3月の終わり頃。
哲司はまたカップ麺を買いにコンビニに出かけた。
(つづく)