第7章 親と子のボーダーライン(その88)
「でも、俺んちの両親は知ってるだろ?」
龍平が言葉を繋いでくる。
「ん?」
哲司は、龍平が何を言わんとしているのかが分からなかった。
もちろん、龍平の親は知っている。
何度も遊びに行ったから。
そして、釣りなどにも龍平と一緒によく連れて行ってくれたりもした。
「そ、そりゃあ、龍平ちの親は知ってるけれど・・・。
ん? まさか、一緒に来るってこと?」
「ああ、その予定なんだ。オヤジは、少し遅くなるかもしれないけれど・・・。」
「ど、どうしてだぁ?」
「それが、アメリカ流なんだ・・・。家族同士がそうして付き合うってのは。」
「・・・・・・。」
そう言われてしまうと、哲司はもう何も言えなくなる。
アメリカ流には付いていけない。
「つ、つまりは・・・、ミィちゃんちの家族と、龍平ちの家族が一緒に集まるんだな?」
「まぁ、結果から言やあ、そうなるか・・・。」
「そこに、俺はひとりだけ?」
「ああ・・・、嫌か?」
「う〜ん・・・、別に、嫌ってことじゃねえけれど・・・。」
「じゃあ、それで決まりだな。」
「ん? ま、待てよ、まだそうと決めたわけじゃない。
第一、誕生日だったら、何か、プレゼントをしなきゃいけねえんだろ?」
「ま、それが常識だろうな?」
「そ、そんなものを買う金、持ってねえよ。」
「金? そんなもの要らねえよ。」
「ど、どうしてだ?」
「ほら、さっき、俺と賭けただろ? で、哲司が負けただろ?」
「ん? そ、それはインチキじゃねえか・・・。」
「そんとき、俺が勝ったら、哲司が作ったあの竹笛を貰うって言ってたろ?」
「ああ・・・。」
「あれで良いんだ。あれにしな。」
「ん? あの笛を?」
そこで、次の授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。
「ど、どうして? どうして、あれが良いんだ?」
体育教師が「集合」の号令をかけた場所に向かいながら、哲司はその点がどうにも納得できないで訊く。
「後で、ゆっくりと教えてやるよ。
だから、今夜は、一緒に行こうぜ。ミィちゃんちに。」
龍平は哲司の背中をポンと叩いてそう言った。
もう、そう決まったとでも言うような顔をしている。
(つづく)