表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
475/958

第7章 親と子のボーダーライン(その74)

哲司は、ボールの位置から斜め後ろへと下がった。

そして、目視でその距離を測る。


(よし! フェイントをかけてやれ。)

哲司はそう考えた。

龍平はキッカーの足の運びを見て、大凡、右に来るか左に来るかを読んでいるようだ。

恐らくは理屈ではない。ちょっとした動きを捉えての判断、いわば一種の勘のようなものだろう。

それでどちらに動くかを決めているようだ。

その裏をかこうとしたのだ。


本音はゴールの左隅に蹴り込みたい。

右利きだし、それが一番力のあるボールが蹴れる。

で、如何にもその逆の右隅に蹴るような足の運びを見せておいて・・・。


頭ではそう考えたものの、結果はものの見事にその左へ飛ばれて、真正面でボールを受け止められた。


「哲司よ。まだまだ練習が足らんぞ。もっと、思いっきり蹴って来い!」

龍平は、とったボールを転がすようにして哲司に返してくる。


「よし! 次は誰だ?」

龍平の声が響いた。



そうして、約20分ほど、龍平は哲司のクラスのシュート練習にキーパー役として付き合ってくれた。

あまり止めてばっかりでは練習にもならないと考えたのか、龍平は適当にゴールを決めさせた。

とりわけ非力な子のシュートにはそれなりの反応で対応しているようだった。


(あいつ、結構、良いとこあるじゃん?)

哲司は、龍平の対応を見てそう思った。

奴の能力であれば、殆どのボールを止められるだろう。

それでも、その能力を最大限に使ったのは、哲司や景山といったどちらかと言えば運動能力に長けた子が蹴ったときだけで、後はやや手加減をしていた。

ゴールキーパーがいても、ちゃんとゴールが決められたという悦びを分け与えているような気がした。


「よし、ちょっと休憩する。」

龍平がそう言ってゴールの前から移動した。

さすがに、連続しての対応は疲れるようだった。


手洗い場へ行って、水道の蛇口から水を飲んだ。

その後ろを哲司が追いかけるように動いた。



「俺のときだけ真剣にしやがって・・・。」

哲司が嫌味を言った。もちろん、口先だけである。

本音はそんなことを思ってはいない。


「ミィちゃんが、哲司に礼を言っておいてくれって・・・。」

同じようにして水道の水を口にしかけた哲司に、龍平がそっと耳打ちをするように言った。



(つづく)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ