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第7章 親と子のボーダーライン(その55)

「では、ひとつひとつ、皆と一緒に見ていくことにしましょうか・・・。」

担任は、クラス内の微妙な雰囲気を察したのか、そう言って赤と黄色のチョークを手にした。

そして、黒板の端に立つ。


「では、この黒板に書かれた順で見て行きますね。

まずは、第3問。これはどうでしょう?

皆さんの解答と一緒でしょうか?」

「は〜い!」

担任の問いかけに、クラスのあちこちからそうした声が上がる。


「そうですね。これで正解ですね。はい、よく出来ました。」

担任は、そう言ってから、手にしていた赤のチョークで大きく丸を描いた。


「次は、第6問です。これはどうでしょう?」

「正解で〜す!」

これまた、同様の反応があちこちから上がる。


「そうですね。はい、これも正解ですね。はい、よく出来ました。」

担任はそう言って、これまた赤のチョークで丸をつける。


「はい、次は第4問ですが、これはどうでしょう?」

担任は、ここでチョークを持った手の甲を口のところへと当てる。


「ん? どうですか?」

これには、クラスが微妙な反応をする。

それまでとは違って、明確に「正解です」とは誰も答えない。

だからこそ、担任は改めて問うたようだった。


(うひっ! こいつが間違ってるんだな・・・。)

哲司は、そう思った。

自分では分からないが、クラスの反応がその根拠だ。

確か、これは景山が書いた奴だ。



「はい、先生!」

沈むようなざわめきがある中で、凛とした声をあげたのは、他ならぬ横にいた美貴だった。


「は、はい・・・、山川さん。」

担任が指名をする。

その一瞬少し困ったような顔をしたが、それでも、こうした状況で挙手をされれば、担任としてはそれを無視は出来ないのだろう。


「その問題、そこに書かれている問題そのものが宿題の問題とは違ってると思いますが・・・。」

指名を受けた美貴は、起立して、それだけを言って、また直ぐに席に着いた。


クラスの中が、また、小さくざわめく。

皮肉るような笑いもあった。

美貴の独特なイントネーションの所為もあるのだろう。


「ええっと・・・、これをやってくれたのは誰でした?」

担任がクラスに問う。



(つづく)



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