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第7章 親と子のボーダーライン(その46)

哲司は、当然のように無視をする。


これが小学校1年生のときであれば、きっと、美貴の頭をどついていただろう。

小学校を幼稚園の延長みたいに思っていたから、思うとおりに手が動いた。

腹が立てば、すぐに手が出た。

当時から、担任に叱られることなど、何とも思ってはいなかった。


それでもだ。それから3年。

哲司も、幾分かは大人になっていた。

瞬間湯沸かし器のような性格は依然として治らなかったが、それでも女の子にだけは手を挙げなくなっていた。

弱いものいじめがカッコ悪いものだとの意識があったのだ。



無視を決め込んだ哲司だったが、それでも、美貴が直ぐ横にいることで、目のやり場に困ってくる。

もちろん、教科書を見る気にはなれない。

かと言って、黒板を見ても何も書かれてはいない。

仕方が無いから、自分のノートに落書きを始める。


と、美貴との境界線上にあった教科書が、美貴の方に引き取られた。

つまり、教科書を持っていかれたのだ。


(な、なんだよ! 何をする気だ?)

哲司は、目の端で、横の美貴を睨むようにする。

さりとて、無視をした以上、美貴をまともには見られない。


美貴が教科書を抱え込むようにして何やら書いている。

それを咎めたいのだけれど、掛ける言葉が見つからない。


「はい。よく読めました。坂上君も、慌てないでゆっくりと読めばちゃんと読めるでしょう?

これからも、そうして頑張ってね。」

担任の声が後ろの方から聞こえてくる。

どうやら、坂上の担当部分が終わったようだった。

それにしても、あいつが褒められるなんて珍しい・・・。

哲司は、いつも読み間違いをする坂上の顔を思い浮かべる。


「では、後半の部分は、誰に読んでもらいましょうかね。」

担任はそう言いながら教壇へと戻ってくる。


そのタイミングで、美貴が教科書を境界線上に戻してくる。

担任に見つからないようにとの配慮らしい。



担任が教壇の上から教室内を見渡す。

次に指名する生徒を探しているようだ。


美貴が、またまた哲司の肘を突っついてくる。

そして、手を挙げろと煽ってくる。


哲司は、それを無視する。

そして、美貴から外した視線の先で、丁度担任の視線とぶつかってしまう。

そう、まさに、出会い頭である。


「う〜ん・・・。」

担任が、目で物を言ってくる。「指名しても良いか?」という目だ。



(つづく)



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