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第2章 奈菜と出会ったコンビニ(その2)

哲司は迷った。


このまま黙って口をつぐむことも可能だろう。

釣銭を間違えたのは俺ではないし、釣銭が多かったことに気づかなかったとしても、それは別に罪に問われることは無い。


「でもなあ・・・。」

と哲司は思い悩む。

あのコンビニは近くて便利だから、よく行っている。

今日のあの子は初めて見た顔だが、店長をはじめ、他のスタッフとは顔なじみだ。

それなのに、俺が釣銭が多かったのを黙って懐に入れたと思われるのも嫌だった。

これから先、あの店に行きづらくなる。


「う〜ん、後で考えよう」と思った。



その前にやらねばならないことがあった。

腹が減っていたのだ。

それでカップ麺の在庫が切れているのに気がついて、買いに行ったのだった。

「まずは、ラーメンを食ってからだ」


哲司は湯を沸かして、今買ってきたばかりの中から、ひとつを選び出す。

手に取ったカップラーメンを見て、

「これ、美味しいですよね。私もよく食べるから。」

と言ったあのレジの子の顔を思い出す。


「ラーメン食ったら、返しに行こうか。」

哲司は、湯が沸く音を聞きながら、そう思った。



結局は、食べた後に再びそのコンビニに出かけた。

分りやすいようにと、一緒にポケットに突っ込んであったレシートと釣銭の全てを持って行く。


レジには顔馴染みの男の子が立っていた。

「あのさ、30分ほど前に、このレジにいた子は?」

名前も知らなかったから、哲司はそうした訊き方になる。


「ああ・・・。新しい子だね。あの子がどうかしました?」

レジの男が訊く。

「いゃあ、実は、釣銭を間違ってないかと思って。」

「えっ!・・・・ち、ちょっと待ってくださいよ。」

男はそう言うと、すぐさま奥の事務所へと消えた。


すぐに、入れ替わるようにして、店長と先ほどの女の子が出てきた。

彼女の目には、涙が浮かんでいた。


「このお客さん?」

店長が女の子にそう言って確かめている。

女の子が「うん」と首を縦に振った。


どうやら、釣銭を間違った事は既に把握されていたようだった。



(つづく)



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