表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
438/958

第7章 親と子のボーダーライン(その37)

「な、何・・・って・・・。」

哲司は、口の中でモゴモゴ呟く。

何かを言わなければ・・・、とは思うのだが、それが言葉になって出てこない。


「仲良くね。」

担任は、美貴の言葉を復唱するかのように言ってから、教室を出てしまう。

その後姿に「しめた!」とほくそえむ顔が浮かぶ。



「ほら、先生も、同じことを・・・。」

美貴はわが意を得たりという顔をする。

で、給食を食べるときに拡げたナプキンなどを丁寧に畳んで、準備してきたビニール袋に使った箸とスプーンを入れ、それをこれまた丁寧に鞄の中へと収納する。


哲司は、呆れた顔で、その美貴がすることを眺めていた。


「はい、これを片付けないと・・・。」

美貴が哲司の机の上を片付けようとする。

散らかったままだった。


「い、いいよ! 自分でやるから、ほっといてくれ!」

哲司は、その美貴の手を振り払うようにする。


「わ、私が片付けては駄目ですか?」

美貴が怪訝な顔をする。

それでも、一旦は引っ込めた手を再び伸ばしてくる。


哲司の箸を箸箱に入れ、拡げていたタオル地のナプキンを綺麗に畳んでから、哲司の給食袋にそれを入れる。


「わぁ! これ、とても可愛い! お母様のお手製ですか?」

美貴が哲司の給食袋を手にしてそう言った。

確かに、小学校入学時に母親が作ったものだった。

花のアップリケが付いていた。


「ふん!」

「うふっ! 照れてますか?」

不機嫌そうな哲司に対して、美貴はあくまでも自分のペースでことを運ぶ。


と、その時だった。

美貴の隣に座っていた岸部悠子が美貴の背中をトントンと叩いた。


「はい、何ですか?」

「・・・・・・。」

振り向いた美貴に対して、悠子は黙ったままで首を何度か横に振る。

「それ以上は駄目よ」とでも言いたげにだ。


「ん?」

美貴が首を傾げる。

もちろん、悠子の仕草の意味が通じないからだろう。


悠子がその場を離れて、教壇の方に行く。そして、美貴を手招きする。

女の子が内緒話をするときによく使う手だ。



(つづく)




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ