第7章 親と子のボーダーライン(その35)
(そ、そんなに気になるんだったら、どうして俺なんかにくっつけたんだ?)
哲司は、担任に対して恨みを言いたくなる。
このクラスでは初めてだが、今まででも転入生が学期途中に入ってくることは何度かあった。
そのときでも、その転入生をサポートするのは、殆どの場合、そのクラスの学級委員がしていたし、哲司もそれが順当なのだろうと思っていた。
それなのにだ。
どうして、今回のこの山川美貴の場合だけは、学級委員ではなくって、どちらかと言えば学級委員にもっとも相応しくない俺にさせるのか。
しかも、へんてこりんな日本語しか話さない女の子をだ。
第一、この子、別に目が悪いわけじゃないんだろ?
眼鏡も掛けてないし、コンタクトレンズをしている風でもない。
だったら、どうして、こんな前の方の席にしたんだ?
しかも、空いていた席でもなく、わざわざ何人かを繰り下げてまで・・・。
(おい! それって、俺に面倒を見させるためになのか?)
哲司は、そう考えると、またまた担任の顔を睨んだ。
担任は、哲司の思いを交わすように、にっこりと笑うだけだ。
給食が終わると、学校での時間としては一番長いお昼の休憩時間に入る。
哲司が最も元気の出る時間でもあった。
ドッジボール、ミニサッカー、三角ベースボール・・・。
いずれも、身体を使う遊びだが、哲司はどれも得意だった。
勉強は駄目でも、遊びはなら任せとけ!っていうタイプだ。
別に自分が率先しなくっても、クラスの子供たち、とりわけ男子の連中は、哲司を何とか自分のチームへ入れようと躍起になってくる。
だから、あちこちから声が掛かる。
「哲ちゃん、ドッジしようぜ。もう場所は確保したから・・・。運動場の南端。」
「ああ・・・。」
いつもの会話が始まる。
「哲ちゃん、昨日の続きをやろうよ。5回裏ツーアウトから・・・。」
また別の子が駆け寄ってくる。
そう言えば、昨日は三角ベースボールをやっていた。
時間切れで、決着が付いてなかった。
「人気者ですね。」
美貴が目を丸くして言ってくる。
とても授業時間の態度からは想像が付かないとでも言いたげにだ。
「・・・・・・。」
哲司は、その言葉を聞いて、ふと不安が頭を掠めた。
(まさか、この子、付いてくるようなことはしないよな・・・。)
「私も、付いていって良いですか?」
哲司の不安がまさに的中した。
(つづく)