第7章 親と子のボーダーライン(その28)
「そいつは分かってる。お前は、硬派だしな・・・。」
武田は、哲司の口癖を逆手に取った。
「げっ! そうくるか・・・。」
「それからどうした?」
「どうもしねぇよ。それから、家に帰った。
何しろ、午後4時から、カッコいい刑事ドラマの再放送をやってるからな・・・。
そいつを見ようと思って・・・。」
「ほんとうか?」
「本当だぜ。なんなら、お袋に訊いてくれ。ま、身内の証言じゃ、アリバイにはなんねぇかもしれねえけれど・・・。」
「それから?」
「それから?」
「夜になって、また家を出たんじゃないのか?」
「う〜ん・・・。ちょっとだけな。」
「何時ごろ? どこへ?」
「晩飯食って、NHKのニュースを見終わってからだし、7時半ぐらいか?」
「NHKのニュース?」
「ああ・・・、俺らしくないって言いてえんだろ? オヤジが見てるから、つき合わされてるだけだ。」
「で、どこへ?」
「オヤジとそっくりな言い方だなぁ・・・。」
「それだけ、心配をしてやってるってことだ。良いから、答えろ。」
「Pに行ってた。」
「ピー?」
「大人のゲーセン。先生も行くんだろ?」
「どこの話だ?」
「Pと言えば、パチンコ。Sと言えば、スロット。これ、常識。」
「な、なに! パチンコに行ってたってか?」
「ああ・・・。」
「お前・・・、中学生だぞ!」
「店に行ったら、“いらっしゃいませ”って言ってくれるぜ?」
「良いか、ああした店はだな・・・。」
武田は、そう言い掛けて、溜息に変えた。
今は、そうした説教をしている場合じゃないと思ったようだった。
「そこに何時ごろまでいたんだ?」
「20分もいなかった。掛からなかったしな・・・。あっという間だ。」
「もちろん、制服じゃないよな?」
「あっ、あったりまえだろ? いくら客商売と言ったって、制服着てたらパチンコ屋の兄ちゃんも入れちゃあくれねえ。」
哲司は、武田が馬鹿なことを訊いていると思った。
(つづく)