第7章 親と子のボーダーライン(その27)
「受けても分からない授業だぜ? 座ってるだけで、時間の無駄だろ?
“時は金なり”って教えてくれたんは、確か、先生じゃなかったっけ?
だから、その教えを忠実に実行したまでで・・・。」
「お、お前な、そりゃあ屁理屈ってもんだ。
中学は、少なくとも義務教育なんだから、最低限、授業にだけは出ろよな。」
武田は、毎度同じことを言う。
かと言って、威圧的じゃあない。
本音と建前をちゃんと使い分けられる先公だ。
だから、その武田って先公だけは、敵に回したくはなかった。
哲司は黙って首だけは縦に振る。
「で、どこをほっつき歩いてた?」
「べ、別に、ほっつき歩いちゃあいねえよ。鉄橋の下で寝てた。」
「て、鉄橋?」
「ああ・・・、仁丹橋のところで・・・。」
「ひとりか?」
「最初はな。」
「て、ことは?」
「俺と同じように、“時は金なり”って考えてる奴が三々五々・・・。」
「三々五々? 生意気な・・・。」
「いつだったかのテストで、これだけが正解で5点貰ったから、よ〜く覚えてる。」
「ぐふっ! お前の思考はどうなってるんだ?」
「至ってシンプル。日本語で言えば単純。」
「で、それからどうした? 悪がき共が集まったんだろ?」
「A君とB君が、連れ立って先に帰った。」
「な、何だ? そのA君、B君ってのは?」
「将来ある未成年だから、俺がここで名前を出しちゃあいけねえだろ?」
「な、何が将来あるだ・・・。」
「ん? それを言っちゃあオシマイだろ?
どんなに悪戯好きで勉強嫌いな中学生だとしてもだ、将来ってのはちゃんとあるんだし・・・。」
「う〜ん・・・、そうか、そうなんだよな。」
「言ってること、分かってくれる?」
「分かるさ、お前の仲間思いがジンジンと伝わってくる。」
武田は、そう言って、何度も頷くようにする。
「で?」
「そこで2時間ぐらい“青春”をやってから・・・。」
「青春?」
「“不純異性行為”の“性春”じゃあねえよ・・・。」
哲司は、意識して悪びれた言い方をする。
(つづく)