第7章 親と子のボーダーライン(その25)
「詳しいじゃないか? その香取京子って子を知ってるのか?」
武田が食いついてくる。
「まぁ、顔と名前程度は・・・、ってとこかな?」
哲司は、答えをはぐらかす。
「ど、どんな子なんだ?」
「興味がある?」
「そ、そりゃあな・・・。少なくとも、今回、我校の生徒に暴力を振るわれたと言っている子なんだしな。」
「そ、そうだなぁ・・・。俺が知ってると言えば・・・。
本名は香取京子、通称お京。
青嵐中学3年A組。出席番号10番。
身長は約150センチと小柄。高いヒールを履いてるからパッと見た目にゃ、もっとでかく見える。
体重は不明。俺も抱えあげたことがねぇし・・・。
好きな色は赤。それでも、その色のパンツを穿いてるかどうかは知らない。
好きな食べ物は、ハンバーガーとピザ。激辛カレーもたまに食う。
朝は、お抱え運転手の車で登校。
放課後の行動は不明。
それから・・・。」
「ちょ、ちょっと待て・・・。」
「ん?」
「何だ? その言い方は。」
「だからさ、俺が知ってる香取京子のプロフィール。」
「やけに、詳しいじゃないか・・・。それで、顔と名前ぐらいってか?」
「ああ・・・、それぐらいのことは知ってる。
うちの担任が俺のことを知ってるのと同じ程度だ。」
「ぐふっ! 旨いことを言う。」
武田は、哲司の言い方をにやりと笑うようにして褒める。いや、煽てた。
「性格的に言うと、どんな子なんだ?」
「う〜ん・・・、そこまでは知らねぇよ。付き合ってる訳でもねえし・・・。」
「でも、そこまでプロフィールがしゃべれるぐらいだから、多少は知ってるんだろ?」
「う〜ん、その子のダチを知ってるもんで・・・。」
「ダチ? 同じ中学の子なのか?」
「ああ・・・。」
「それは、男? それとも女?」
「俺が知ってるって言ってんだから、男に決まってるだろ?
俺は、女のダチは持たねぇ主義だし・・・。」
「ま、まさか、その友達ってのが、昨日のグループにいたんじゃないだろうな?」
「そ、そこまでは知らねぇよ・・・。」
そうは言ったものの、哲司はふとそれが心配になってくる。
(つづく)