第1章 携帯で見つけたバイト(その42)
「香川主任はどうするつもりだ?」
哲司は、それを思った。
最期の仕上げとして電気掃除機が登場してくるのは予想したとおりだった。
しかも、今やっている袋詰めの作業も、もうまもなく終わる。
12時までにはまだ30分ほどがある。
これだけの部屋、掃除機をかけたとしても時間的には片付けられる。
そうは思うものの、自分だけが最期までするということには、納得が行かない。
やはり、山田も何らかの作業はすべきだと思う。
「第一に、あの山田のゴミの入れ方を知ったら、一体どうするんだろう?」
あれだけのゴミを再度区分けする事を考えると、それだけは絶対にしたくないと思うのだ。
奈菜とのデートがぶっ飛んでしまう。
仮にだ、もしだ、あの山田のゴミの区分の仕方がなってないと言われたとしてだ、俺はどうすべきなのだ?
と哲司は考える。
「2人でゴミの処理をやる事になっていたのだから・・・」
香川主任あたりはそう言うんだろうな。当然だな。
そこでだ。
「確かに2人でと言われましたが、互いに協議して、半分ずつを担当する事にしたんです。」
これが俺の主張だな。
果たして、それが通用するのかどうかだ。
通用するのであれば、俺はやることはちゃんとやったんだから、約束どおり12時には日当をもらって帰れる。
そうなれば、何にも問題は無い。
予定通りだ。
だが、・・・・どうなのだろう。
そうしたいのは山々なのだが、この山田を扱いかねている香川主任が果たしてそれを認めてくれるかどうかである。
山田も黙ってはいまい。
「最初に、そんな事を言ってはいなかった」と反撃するだろう。
それを押さえ込めるのか、思惑通り、やり直しを山田にさせられるのか?
そこだな。問題は。
そこでだ、2人してやり直しを言われたら、どうする?
う〜ん、日当も要らんから、俺は12時で帰る。
哲司は、そこまで腹を固める。
何が何でも、今日は奈菜との時間を大切にしたいのだ。
(つづく)