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第7章 親と子のボーダーライン(その12)

「専門技術を身に付けて・・・」と言うのが両親の主たる主張だった。


「工業高校を出ているんだから、それなりの基礎知識はあるんだし、それをさらに専門的に高めて・・・。

ここだと、資格も取りやすいらしいし・・・。」

尤もらしい文言を並べていたように記憶している。


(ええっっっっ! ま、また、学校へ逆戻りするんかい?)

その話を聞いたときの、哲司の偽らざる心境である。

正直言って、二の足を踏んだ。



もともと、勉強は大嫌いである。

だから、義務教育の中学を卒業するとき、ある種の期待感があった。

「もう、これで勉強しなくっても済む?」と。


もちろん、現実は哲司が思うほど甘くはない。

「今の成績では、入学できる学校の範囲も限られますし・・・。」

そう言う学校側を何とか説き伏せて、両親は哲司を4年制の工業高校に押し込んだ。

入試が面接と作文だけだったから、それでも何とかなったようだ。


哲司は、勉強をしなければならないことにはうんざりするものを感じていた。

だが、中学の同級生達が次々とどこかへ進学するのだと聞くようになってからは、さすがに焦りのようなものを感じ始めていたから、兎も角も、卒業後の身の振り方が決まった安堵感だけはあった。

「自分だけ、どこにも行くところがない。」

そうしたことだけは免れたという思いだった。

別に、工業高校に進みたかったわけではないが、まずは緊急避難という感じだった。


それと、哲司にその進学を拒絶させなかった理由がもうひとつあった。

それが、その工業高校が全寮制だったことである。

つまりは、その高校に入れば、この家から出られる。

この地域からも離れられる。

そうした思いが哲司を前向きにさせていた。



それと同じことが、今の専門学校に入学する場合にもあったように思う。


哲司が家電量販店を退職した事実を知った両親は悩んだようだ。

もちろん、事前に相談なんかはしていない。

その店で働く気になれなくなったから、辞めただけだ。

哲司にすれば、ごく普通の選択をしたつもりだった。

仕事なんか、どこにだってある。

そんな思いだった。


で、しばらくは「ゆっくりしよう」と思っていた。

やはり、学校での勉強とはまた違った苦しさがあったからだ。


だが、哲司が考えていなかったことが起きる。

会社からの「1週間以内に寮を退出してくれ」という通告だった。



(つづく)




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