第1章 携帯で見つけたバイト(その40)
「はぁ?・・・・・・それって、どういう意味だ?
ひとりで動かせるんだったら、僕がやりますとでも言うのか?」
香川主任が睨みつけるようにして山田に言う。
余程、山田のことが気に入らないようだ。
そのくせ、山田の半径1.5メートル以内には近づかない。
あの部下の森本を瞬時に投げ飛ばしたのをその目で見ているからに他ならない。
口では戦えるが、実力行使をされたのでは堪らないと思っているようだ。
「何も、そんな事は言ってないでしょう!
ただ、2人でやる必要はないでしょう、と言ったまでです。」
山田は涼しい顔で言う。
暗に「自分がやらなくても・・・」という魂胆が見え見えである。
そのことに気がついたのか、香川主任の顔が紅潮した。
「お前は、もう仕事が済んだからそうして珈琲を飲んでるんだろ?
あいつは、まだ作業が残っているから、ああしてやっているんだ。」
その怒りを含んだ言い方を聞いて、台車を押してきた男のひとりが香川の袖を引張った。
「ちと、言いすぎです」とでも言いたかったのだろう。
香川はさすがに組織に属する人間である。
そうして袖を引かれたことで、その意味を自覚したようだった。
「ふぅ〜」と一息吐いてから、
「なあ、山田。仕事ってのは、そういうものじゃないんじゃないのか?
例えアルバイトと言う立場ではあってもだ、こうして2人で作業をすることになったんだ。
互いに協力して、助け合ってするのが普通だろ。
巽はまだ作業をしているんだ。
だから、この掃除機をかけることがひとりで出来ると思うのだったら、自分がやってやってもバチは当たらんだろう?」
今度は、感情を抑えるようにして、ゆっくりと諭すような口調で言う。
「どうして、そうなるなるんですか?
それって、オカシイでしょう!」
瞬時に山田が反撃に打って出る。
「どこがオカシイ?」
「その言い方だつたら、わざとゆっくり仕事したやつが楽をするってことでしょう。
せっせと頑張って早く片付けたものには、次の仕事が無理やりに与えられる。
それって、オカシイことじゃないですか。
あんたの会社じゃ、そうして仕事をやらせているの?
手の早い奴がたくさんの仕事をして、手の遅い奴は楽をする。
それで給料は一緒。
そんな会社なの?」
山田は屁理屈を立て続けに並べてみせる。
これを聞いていた香川の顔色が見る見る変化していった。
哲司は、ハラハラしながらも、ただ黙ってことの成り行きを見つめる他はなかった。
(つづく)