第6章 明日へのレシピ(その83)
「お、俺だって・・・、そんな自信はないよ。その子を支えるなんて・・・。
ただ・・・。」
「ただ?」
「ほっとけない! そんな、感じかなぁ・・・。」
哲司は、自分にもその先の答えがないことを自覚している。
「お兄さんって、ほんと、良い人ね。」
千佳は、どうしてなのか、溜息を付くようにそう言ってくる。
「・・・・・・。」
哲司は、どうにも反応が出来ない。
「でも、ことは現実で起きているんだし、夢や理想だけじゃどうにもならないことだってあるし・・・。」
「う、うん。言ってる意味は分る。」
「女の子はねぇ、優しくされると、本気で傾くものなのよ。それだけは、よ〜く覚えておいてね。
一時の感情で優しくして、で、それが醒めたら“はい、さようなら”ってのは卑怯よ。卑劣よ。男として最低よ。
そうするぐらいだったら、最初から優しくなんかされない方がマシなの。」
「・・・・・・。」
「これは、何も、お兄さんがそうするつもりだと言ってるんじゃなくって・・・。」
「そ、それは、分ってる。」
「さっきも言ったけれど、“愛情”と“同情”はまったく別物なんだけど、それを間違う、つまりは勘違いするのは、男も女も一緒なの。
自分が一番辛いときに優しくされると、例えそれが“同情”や“哀れみ”からのことだとしても、女はそれを“愛情”だと思っちゃうものなの。
そういう生き物なの。」
「・・・・・・。」
「勘違いなの、誤解なのよね。でも、その誤解に縋りたい時だってあるのよ。」
「誤解に縋る?」
「そ、そうよ。“こうだったら良いのに”っていう希望的観測。そこに少しでも近づけたいって欲求が生まれるのよね。
そうでなければ生きていけない部分もあるし・・・。
とりわけ、女の子は、そういう欲求って男の子より強いんだと思うわ。
だから、占いが流行るのよ。」
「・・・・・・。」
「占いって、“当たるも八卦・・・”って言うでしょう?
もちろん、女の子だって、それを100パーセント信じてるわけじゃないんだけれど、それでも、占いって聞くと、すぐに“私の場合は?”って知りたくなるの。
つまりは、それだけ受身なのよ。
その占いで、ちょっとでも良いことが書いてあれば、それがまさに自分の身に起きそうな気がするし、ちょっとでも悪いことが書いてあれば、それだけで落ち込んだりするものなの。
扱いにくいでしょう?」
千佳は、そう言って苦笑する。
自分のことを言っているようでもある。
(つづく)