表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
376/958

第6章 明日へのレシピ(その62)

「えっ! 彼女? ・・・。」

哲司は、そう言った瞬間には奈菜の顔を思い浮かべたものの、どう答えるかは躊躇した。


「そんなものいないよ。」

結局は、そう答える。いや、そう答えておく。


「募集中なんです?」

ミチルが畳み掛けてくる。

哲司は苦笑するしかない。



「ミチル、それはお兄さんに失礼でしょう?」

ハンバーガーを頬張りながら、千佳が牽制球を投げてくれる。


「それとも、ミチルが立候補するつもりなの?」

今度は、一転して煽るように言う。


「そ、そんなぁ・・・。」

そうは言ったものの、ミチルは満更でもないような笑みを浮かべる。

そして、千佳と哲司の顔を交互に見比べるようにする。

哲司は、嬉しいというより、呆れて言葉も出ない。

そうも簡単に、そうした会話がなされるのが不思議な気がするのだ。


「お兄さん、どうします?」

まるでゲームでも楽しむかのように、千佳は前の席に並んで座るふたりを見ながら面白そうに言ってくる。


「ど、どうもしないよ。」

「私みたいなのには、興味ないです?」

横に座ったミチルが身体を乗り出すようにして訊いてくる。

どうやら、冗談ではないらしい。その目は結構真剣だ。

少なくとも、哲司にはそう思えた。


「う〜ん・・・、まだ、出会ったばかりなんだし・・・。」

哲司は、ここで答えを出せる筈は無いだろう? という感覚でそう返す。

このままだと、とんでもないことになりそうな気さえしてくるからだ。



「はい、ご馳走様でした。ほんと、美味しかった・・・。」

千佳がハンバーガーを包んでいた紙を小さく畳むようにしながら小さく頭を下げる。

結構常識的なんだと哲司に思わせた。

哲司は、黙って会釈を返す。


「ああ・・・、千佳さん、早い・・・。」

「何を言ってるのよ、ミチルが遅いだけよ。」


「で、お兄さん、何か、聞きたいことがあるんでしょう? 答えられることであれば、何でも言って・・・。」

千佳は、先ほど哲司が言い掛けたことをちゃんと覚えているようだった。

「ご馳走になったお礼に」との前提はあるようだが、積極的に答えてくれるつもりらしい。


哲司は、それでも周囲を見渡した。



(つづく)




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ