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第6章 明日へのレシピ(その41)

その昔、確か中学生のときだったと思うが、哲司はこうして特定の女の子の後をつけたことがあった。

もちろん、顔見知りの子ではないし、恋人にしたいからと思ってそうしたものでもない。

単なるゲームのつもりだった。


当時、とある有名な俳優が主演したドラマに私立探偵を扱ったものがあって、たまたまだが、そのビデオを見る機会があった。

これは後で知ったことだったが、その最初の放映は哲司が生まれる前の1979年。

実は、父親がそのドラマが好きで、毎週の放映をビデオに撮っていたらしい。

そのビデオが家にあったのを偶然にも哲司が見ることになったのだった。


「カッコいい!」

哲司は、その俳優にも憧れたが、と同時に、その私立探偵という職業にも憧れを抱いた。

自由だし、誰かさんみたいに時間に縛られる事が無い。


そのドラマにも、当然のように人の後をつける行為があった。

いわゆる「尾行」である。

本人に気づかれないように、その特定の人物の行動を探るのだ。

何月何日、何時何分、どこへ行って誰と会ったのか・・・。

そして、どんな話をしたのか・・・。

そうしたことを克明に調べて記録するのである。


まるで刑事みたい。

かと言って、そうした公権力の組織には属していない。

その何とも言えない中途半端さが、当時の哲司の心を揺さぶった。

で、実際にそれを真似してみたくなったのだ。


学校から帰って、制服から私服に着替える。

その時にも、その主演俳優の格好に近いものを意識した。

ジーンズにTシャツ。それに丈の長い上着。


それに着替えて駅前に行く。

そして、改札口から出てくる人の波から、「これっ!」と思えるターゲットを選び出す。

やはり、女の子に目が行く。

しかも、哲司と同年代にだ。


ターゲットが決まると、さっそくその後をつける。

「尾行」の開始である。



哲司は、ようやくそのことに気が付いた。

(そうだったよなぁ・・・。昔、探偵に憧れて・・・。)


もうあれから7〜8年も経っている。

あの時は、完全にゲーム感覚だった。

その「尾行」に成功しようが失敗をしようが、実生活には何の変化も影響も無かった。

(今回は、そうではない。)

その思いだけは、哲司の頭にしっかりとあった。



(つづく)




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