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第6章 明日へのレシピ(その37)

「だ、だから、新人を募集してたんです?」

ミチルが素っ頓狂な声をあげる。

そして、自分で自分の口を押さえに掛かる。

哲司の存在を気にしたようでもあった。


「まぁ、そういうことなんだろうね・・・。そうして、新陳代謝を計ってるんだ・・・。」

千佳は、自分を納得させるかのように言う。


「で、でも・・・。」

「もちろん、ミチルが悪い訳じゃないし、そのおばさんに遠慮なんてする必要も義理もないんだけれど・・・。ただ・・・。」

「ただ?」

「いずれは、私たちもそのおばさんと同じ運命を辿るってことよ。つまり、使い捨てにされるってこと。」

「・・・・・・。」



その時だった。目の前を1台のパスが通り過ぎて行く。

そして、4〜50メートル先の停留所で停まった。


(あっ! あのバスだ!)

その後姿を眺めていた哲司は、それが自分が乗るべきバスであることにようやく気が付く。


(ダッシュすれば・・・、乗れる・・・。)

そう思いはしたものの、その重い腰は長椅子から立ち上がることは無かった。


ひとつには、ここで駆け出したら格好が悪いという思いがあった。

もちろん、どこの誰なのかも知りはしないが、少なくとも自分とほぼ同年代の女の子ふたりと同じ長椅子に腰を下しているのだ。

それなのに、まるでバス停を間違えたかのように駆け出すのは如何にも不様。

後で、このふたりに話題にされるであろうと思った。

それだけで、立てないのだ。


それともうひとつは、このふたりの会話をもう少しこのまま聞いていたかったからでもある。


(ま、また30分ほど待てば次のバスがやってくるさ・・・。どうせ、急がないんだし・・・。)

哲司は、自分にそう言い訳をする。



「じゃあさ、ミチルは住所はどこって書いたの?」

千佳が訊いている。


あのバスを見てから、哲司の注意がそちらに向けられていたからだろう。

その間のふたりの会話が分らなかった。

だから、突然のような言葉に聞こえる。


「以前の寮の住所で書きました・・・。不味かったですかねぇ?」

ミチルが不安そうな顔で言っている。



(つづく)



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