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第1章 携帯で見つけたバイト(その35)

哲司は予定通りの12時でこのバイトを切りあがるつもりだ。

指示された事をきちんとやってさえおれば、ある程度それが可能だと思っている。

それが、あの携帯サイトが紹介してくれるバイトの特徴でもあった。



「金で割り切る。」

こちらもそうだし、雇う側もどうやら同じような傾向がある事業主が多い。

愛想が良いとか、仕事がきれいだとか、そういった付加価値のようなものを求められることは案外と少なかった。


今日の運送屋は初めてだが、同じ携帯サイトの紹介でバイトをした引越し作業でも、時間内に言われた作業をある程度やっておれば、帰りには現金でその日の賃金をくれていた。


今日のバイトでも、それと同じイメージである。

9時から12時の3時間。

指定された場所に行って、言われる作業をすれば良い。

簡単な仕事だと紹介されていた。


もしこのバイトが、「きれいに後片付けのできる人」と書かれてあったら、絶対に応募していない哲司である。

その「きれい」とか「きちんと」とかいう感覚のような物差しが苦手なのだ。

やる側は「これできれいだ」と思っても、それを評価する側にすれば満足しない事が多い。

「きれいに出来てないじゃないか」とクレームを出す。

「きれいにやったつもり」の哲司は、当然に文句を言うことになる。

すると、「もうちょっとやってくれないと」と金を払うのを渋る。

これが嫌なのだ。


それで、もし「そこまで言うのであれば・・・」と作業を行えば、当然に予定の時間をオーバーしてバイトをすることになる。

確かに「金が欲しい」からバイトをするのだが、同じ金をもらうのに「予定外の時間を費やす」のは絶対に嫌だった。


「金は自由な時間を楽しむために必要なのであって、その自由な時間を潰してまでも金が欲しいのではない。」

それが哲司のバイトに対する価値観である。



ましてや、今日は午後の2時からは奈菜がアパートにやって来るのだ。

同じ自由な時間と言っても、今日のその数時間は特別なのだ。

1ヶ月に1回か2回しかない絶好のチャンスなのだ。


このバイトだって、その奈菜がスノボーの一泊旅行に行こうと言うからしているのだ。

その旅行に行くには、どうしても3万円ぐらいは必要なのだ。


これが他の男友達などからの誘いであれば、哲司は「行く」とは言っていない。

当然だが、このバイトもしてはいない。

兎も角、1日2食のカップラーメンが食える状態であれば、余程のことが無い限りバイトなどもしたりはしないのだ。


それだけに、哲司はこのバイトに対する思いも、それなりにシビアである。



(つづく)




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