第6章 明日へのレシピ(その26)
哲司は、頑張って頑張って、その女の子の顔を睨み返している。
ここで引き下がった、何のために苦言を呈したのかが分らなくなる。
第一、同世代の女の子にそこまで無視をされるなんて屈辱以外の何者でもない。
するとだ、後から座った華奢な女の子が席を立った。
そして、もうひとりの子に何事か目で合図をしている。
(こんな不良みたいな人に逆らったら、何をされるか分らないし・・・。)
哲司は、そうとでも言われたような気がする。
と、隣に座っていた子も同じようにして椅子から立ち上がった。
文句を言ったから、他の椅子にでも移動するのかと思ったのだが、そうでもなさそうだった。
ふたりは、長椅子の上にそれぞれの大きなバッグを並べるようにして置きなおしてから、自分たちはすぐ傍の鉄柵の上に並ぶようにして腰を降ろした。
つまりは、長椅子をバッグに譲って、自分たちは本来そうして座るべき物ではない車道との境界線に造られていた鉄柵に腰掛けたのだ。
まさに、本末転倒である。
哲司はそのふたりを振り返えるようにして見る。
(言ってる意味が違うんだけどなぁ・・・。)
そうした思いでだ。
それでも、自分の主張が半分は通じた気がして、そのあとの言葉が出ない。
ここいらが、哲司の哲司たる所以なのかもしれない。
とことんまで言い切れないのだ。
すると、哲司に振り返られた華奢な方の女の子が、今度は見下げるような目で哲司を睨み返してくる。
(あんたの言うとおりにしたんだから、文句は無いでしょう?)
そう言われたような気がする。
だが、決して、そうではなかった。
「もう、厭らしいんだから・・・」
そう呟くのである。
(な、何! ・・・!)
さすがに哲司はむかっ!とくる。
ひとりの子、そう最初に哲司の傍に座った子はジーンズを穿いていたのだが、華奢な女の子はミニスカートだったのだ。それもかなり短い。
哲司は、今、そのことに気が付いた。
そうした格好で、鉄柵の上に腰掛ければ、どう見えるかぐらいは本人も分っているだろうとは思うのだが・・・。
その見られたくはない格好を哲司が覗くような目で見たと言っているようだ。
もちろん、哲司にそんなつもりは無かった。
「もう・・・、好きにすれば?」
哲司は、闘争心が揺らぐのを感じて呟いた。
(こんな馬鹿、相手にしてられん!)
そう思ったのも事実だった。
そこに、そのバス停にバスがやって来る。
(つづく)