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第1章 携帯で見つけたバイト(その29)

「よし、今のうちに自分の作業を進めておこう。」

哲司はそう思って再び作業に取り掛かる。


そうか、山田の奴、あんなやり方をしていたんだ。

でも、あれはダメだ。

必ずやり直しを言われる。


だけど、そう言われて、黙ってそれに従うような奴だとも思えない。


哲司は、何となく不安になってくる。

ひょっとしたら、こっちにもとばっちりが来るかもしれない。

だから、エリアを分けてそれぞれの責任でやるようにと仕掛けたのだったが、あの香川主任と山田の関係では、それも単なる言い訳にしかならないのではないか。

そんな気もしてくる。


「こりゃあ、あの袋詰めの中身がばれないうちにバイトを終了させて帰らないと、一旦ひっかかったら、とんでもないことになりそうだ。

そうなれば、2時までにアパートへは戻れなくなる。

折角、奈菜が部屋に来ると言ってきたのに・・・・。」

哲司にとっては、今日は、その点がもっとも重要なのだ。

2時から6時ぐらいまでの4時間、奈菜と一緒にいられるということだけが、今日の関心事なのだ。

後のことは、いわば、どうでもよいことである。



「よしっ!ここは終わった。」

背後で山田の声がする。

どうやら、残っていたゴミもすべて頭陀袋に入れたようだ。

何もかもぶち込んでの事なのだが。


「ちょっと、休憩しません?」

山田から哲司に声を掛けてくる。

初めてのことである。


9時に集合場所で出会ってから、山田から声を掛けられることは一度も無かった。

それどころか、こちらから声を掛けても無視をされたのだ。

「やりにくい奴」だとの印象が強い。

おまけに、あの装置のことで作業員1人を投げ飛ばしたから、この場を仕切る香川主任にも睨まれている。


哲司は訝った。

今までとはまるで人間が変わったような態度に、あの投げ技を見たとき以上に警戒感を強める。


「お金、僕が出しますから、珈琲でも買ってきてくださいよ。」

山田の猫なで声が、哲司の背中に纏わり付いてくる。


「一体、どうしたと言うのだろう?」

哲司は、今回ばかりは、すぐには動けなかった。



(つづく)



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