第5章 舞い降りたエンジェル(その28)
「どのようなお話でしょう? 私など、世間知らずですし、お役に立つかどうか・・・。」
女性は、少し逃げ腰になる。
「いえね、先ほど、僕も付き合っている女性がいると言いました。」
「ああ・・・・、はい。」
女性の安堵の顔が浮かぶ。
直感的に、恋愛の相談なのだろう。それならば、自分でも多少は答えられる、と思ったようだ。
「現在進行形かと訊かれましたが、事情があって、ちょっと変則的でね。」
「変則的?」
「はい、その女性、実は高校生なんです・・・。」
「あら、まぁ・・・・。」
女性は少しの間、小さく口を開けたままになる。
「おまけに、その子のお腹には子供がいるんです。」
「えっ!・・・・た、巽さんの・・・ですか?」
「いえいえ、違いますよ。僕の子じゃありません。」
「ん?・・・・それって、どういうことです?」
「う〜ん、・・・・・。言いにくいのですが、誰の子か分らないようです。
少なくとも本人はそう言ってるんです。強姦されたんだと・・・。」
哲司も周囲に配慮して、その女性にだけ聞こえるような小声で話している。
「まぁ、・・・それは可哀想に・・・。怖い世の中ですよね。」
「それでも、付き合ってくれるかと言われているんです。」
「なんと・・・・それは辛かったでしょうねぇ、その子。
つまり、巽さんという恋人がいるのに、そんなことになってしまって、そのうえに赤ちゃんまで・・・・。」
「いえ、・・・・その事件があった時には、まだ知り合っていなかったんです。」
「ああっ・・・、そうだったんですか。
じゃあ、巽さんもお腹が大きい子を好きになられたと?」
「う〜ん、知り合ったときには、まだそんなに目立つ状況でもなかったですし・・・。」
「じゃあ、どうしてその子、中絶しなかったんでしょうね。
どこの誰の子か分らないんでしょう? 強姦された結果でしょう?
親御さんも、きっとそうするように言われると思うのですが・・・。」
「僕も、その話を聞いて、そうするのが普通だろうと思ったんです。」
「ところが、ですね。
その子は、誰の子か分らないけれど、生きているんだから、生んで育てたいと言うんです。お腹に手を当てて、ここにちゃんといるんだって。」
「う〜ん・・・、難しい問題ですねぇ。
私も、その子の気持は分らないではありません。
特に、こうして自分の子供を抱いた経験からすれば、やはりいとおしくなるものだとは思います。
で、でもねぇ、現実的には・・・・。」
女性も我が事のように考えてくれる。
「そこで、ご相談なんです。
もし、あなたがこの子の立場だったら、どうされます?」
(つづく)