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第5章 舞い降りたエンジェル(その27)

席に戻った哲司は、座席に取り付けてある小さなテーブルを引っ張り出す。

そして、女性から受け取った携帯用ポットと今入手してきた紙コップを並べて置く。


それから、おもむろにポットの蓋を開けて、紙コップに珈琲を注ぎ込んだ。



「ああ・・・、わざわざ紙コップまで・・・。

逆にお気を遣わせましたねぇ。ご免なさい。」

女性は、哲司が手にした紙コップを見て恐縮したようだ。

まさか、哲司のような若い男性がそのような配慮をするとは思っていなかったようだ。


「私は、中についているカップをお使いいただいて・・・と思っておりましたから。」

「で、でも・・・・。」

「有難うございます。私に気を遣っていただいて・・・。」


「では、遠慮なくいただきます。」

哲司はそう言って珈琲を一口含む。

女性が言っていたとおり、既に砂糖もミルクも入っているものだから、想像していたものよりは甘く感じる。


「甘過ぎはしないですか?」

「いえ、美味しいですよ。温かくて。」

哲司は大人の答え方をする。


「でも、不思議なものですねぇ。」

「何がです?」

「私、そのポットにカップがひとつしかついてないのを分っていたんですよね。」

「はい。」

「本当なら、どうぞとお奨めする前に、紙コップをふたつ買っておけば良かったのでしょうが・・・、この子を抱いていただいた時に、もうそんなことはどうでもよくなってしまっていたんです。」

「・・・・・・。」

哲司には、出せる適当な言葉が見つからない。


「昔から、子供は純真無垢って言いますよね。

この子があれだけ簡単に笑って、そして抱かれに行ったんです。

驚きはしましたが、逆に、それだけ安心できる人なんだろうと。

それで、もう同じカップで飲んだとしてもいいやなんて考えたり・・・・。」

「そ、そうだったんですか・・・。」

哲司は、もう肯定も否定もしない。



哲司は残っていた珈琲を一気に飲んだ。そして、ポットを女性に返そうとする。


「ああ、じゃあ、そのままそこに置いておいてください。」

女性は赤ん坊を両手で横抱きにしているから、手が使えない。

それもあって、ポットはそのまま哲司のテーブルの上に置くことになった。



「ご馳走様でした。

ところで、僕からもご相談したいことがあるんですが・・・。」

哲司は、奈菜のことを、同じ女性の立場としてどう考えるかを訊いてみたかったのだ。



(つづく)



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