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第4章 奈菜と言う名のマドンナ(その31)

奈菜は、哲司のことを避けてはいない。


これだけは確かなことだろう。

そうでなければ、一旦姿を見せなくなったコンビニに再びバイトに来ることはしない。

バイトだけを考えれば、他にもいくらでも働く場所はあった筈だ。


しかしだ。

奈菜がバイトをする目的がよく分からない。

奈菜の父親は、「バイトなんかより、勉強を」と言っていた。

高校2年、この4月からは3年になるのだから、進学を考えているのであれば、父親が言うのが順当なところだろう。


生活費のためのバイトではない。

それだけははっきりしている。



冬休みの時には、スノボーが趣味で、それをやるための小遣い稼ぎが目的なのだろうと勝手に解釈していたが、今は既に春になっている。

つまりスノボーのシーズンは終っている。


それでも、またバイトをしている。

何のためのバイトなのだろう?

何に使う金が必要でバイトしているのだろう?



奈菜は妊娠している。

その子供を何とかするための手術も存在している。

妊娠した事を親に言えずに、バイトや売春まがいのことをして堕胎手術の費用を捻出している高校生の話を聞いたことがあるが、奈菜の場合には当てはまらない。

周囲の大人もその事実を知っているのだし、もしそうした手術を受けるのであれば、当然にあの父親でもその費用は黙って出すに違いない。


第一、奈菜本人が「ここに居るんだよ」とお腹をさすっていたことから考えると、奈菜にはそん気も無いようだ。

怖くてなかなか聞き出せないが、やはり「この子は産む」つもりなのではないかと哲司は思う。



だとすればだ、余計にバイトの目的が分らなくなる。

スノボーのためでもなく、手術のためでもない、となれば、今の奈菜にとって自由になるお金など、それほど必要だとも思えない。


だったら、どうしてバイトなんかする?

しかも、妊娠している体をおしてまで。



そこまで考えたとき、哲司の脳裏に奈菜が言った一言が蘇ってきた。



(つづく)



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