第4章 奈菜と言う名のマドンナ(その27)
兎も角、この(4)にあるとおり、奈菜は突然バイトを辞めた。
もちろん、事前に哲司への連絡があったものではない。
コンビニに行って、奈菜の姿が見えないから、店長に聞いてみた。
そこで「辞めた」と聞かされたのだ。
哲司にとっては、青天の霹靂である。
そのちょっと前には、奈菜から「一泊でスノボー旅行に行きませんか?」と誘われていたのだから、当然である。
だから、店長に食い下がった。
「どうして?」と。
その時の店長の説明が何とも印象的だった。
「今時の高校生ってのは、気まぐれだしなあ。何を考えているのか、さっぱり分らんよ。」
もちろん、バイト上でのトラブルなどはなかったそうだ。
つまり、店長側でも、突然に辞めた理由は分らないとのことだった。
それを聞くと、なおさら、どうして?と聞きたくなるものだ。
これから親しくなれると期待していただけに、そう簡単に諦めることは出来ない。
店長に、奈菜の携帯番号を教えてくれと頼んだ。
だか、規則だからと、それは教えてくれない。
その時点では、店長と奈菜が親戚関係だとは知らなかったから、そこまで言われると、それ以上は追及できなかった。
残念だが、止むを得ないと考えた。
哲司は、改めてその時の映像を思い浮かべる。
ところどころに不鮮明な部分はあるが、おおまかな顛末は思い浮かべられる。
そこで、「ああ、この恋も終ったのか?」と落胆したことを覚えている。
何度と無く失恋の経験はあったが、奈菜との恋は、まだ始まったばかりだったこともあって、数年来忘れていた「ドキドキ感」に浸っていたのに・・・、という思いがあった。
久しぶりに感じた「淡い恋」の終焉を自覚した。
「そうなんだよなあ。一度はあれで終ってたんだ。」
哲司はの口をその言葉が衝いてくる。
「なのに・・・・。」
そうなのだ。
それから2ヶ月以上も経った3月の下旬。
例の如くに、週1回のカップ麺を買うためにコンビニに行ったら、そこに、また奈菜の姿があったのだ。
「これまた、どうして?」
喜び半分、驚き半分で、奈菜の顔をまじまじと見つめたことを思い出す。
「そうか!・・・・ここからが、本番なんだ。」
哲司は、また、ノートの前に座りなおした。
(つづく)