第4章 奈菜と言う名のマドンナ(その22)
(1)12月21日、 コンビニでバイトしているのを見る → 釣銭事件
(釣銭を確認しなかったのは、実家に帰れない理由を考えていたから)
(2) 1月 9日、 スノボーを抱えて行った → 俺のものだと勘違い
現時点では、以上のことしか書けていない。
だが、この後に続く事柄は明確だ。
ただ、その日にちがこれまた分らない。
(3)として書き入れるべき事項は、「奈菜が1泊でのスノボー旅行を提案」したことである。
順序としては、当然に(2)の後だ。そうでなければ理屈に合わない。
だが、スノボーを抱えていった1月の9日から、どれぐらい後なのかが掴めない。
そして、その後に来るべき(4)の項目も決まっている。
だが、これまたその日にちは不明なのだ。
それが、「奈菜がバイトを辞めた日」である。
哲司は、日にちの部分を空けたままで、それをノートに書き込んだ。
(3) 奈菜が1泊でのスノボー旅行を提案
(4) 奈菜がバイトを辞めた
日にちの不確実さはあるものの、これが今年の冬にあった一連の事柄だ。
どう考えても、奈菜のお腹の子供が哲司だと疑われるような事実はどこにも無いことがよく分かる。
「そうだろう。これが全てなんだ。
なのに、どうして、奈菜の父親は、もっと以前からの顔見知りではないのか?と疑うのだろう。」
その点が哲司には不満だし、かつ納得がいかない。
たったこれだけの期間で、子供が出来、なおかつ、それが病院の検査で確認できるまでには至るはずは無い。
「ああ、そうか、逆に言えば、それだからこそ、もっと以前からそんな関係ではなかったのか?と疑われるんだ。」
哲司は、父親の顔を思い浮かべながら、立場を変えるとそのようにも考えられることを自覚した。
「だけどなぁ。・・・・・・・・」
と哲司の言葉は続く。
「当の本人である奈菜ちゃんが、その相手が俺ではないとどうしてはっきりと否定しないのだろう?」
やはり、その点に辿りつく。
(つづく)