第4章 奈菜と言う名のマドンナ(その13)
また今度、奈菜の父親と会って話をすることになるだろう。
そのときに、もう少し自分なりの考え方や今度の奈菜との関係を整理しておきたいと思ってのノートへの整理である。
だが、今、ここに書き出せたのは、
(1)12月21日、 コンビニでバイトしているのを見る → 釣銭事件
(2)1月中旬、 スノボーを抱えて行った → 俺のものだと勘違い
の2つだけ。
「何のことやら、分からんな。」
哲司は、自分がやっていることが、どこか空しい作業のような気がしてくる。
だが、その一方では、
「でも、こうしてたった数ヶ月前のことでも、人間って、覚えていないものなんだなぁ。」
と、それは自分だけではないだろうという感覚も持ち合わせている。
「それからなんだよな。奈菜の方から積極的に何かを話しかけてくるようになったのは・・・。」
哲司は、これを事実として書き込みたかったが、他人から見れば「あくまでも状況証拠だけじゃないか」と言われるような気がして、持ったボールペンを走らせることができない。
「だったら・・・・次の事実は・・・・。」
哲司は、また頭を過去のチャンネルに合わせにいく。
「そうだ、そうだ、・・・・・でも、あれって、いつだった?」
哲司が思い出したのは、奈菜から次の言葉が掛けられた日のことである。
「1泊でスノボー旅行に行きません?」
スノボーを抱えて店に行った日も明確ではないが、これまた旅行に誘われた日も記憶にない。
ただ、そう言われたときの「瞬間映像」だけは鮮明に出てくる。
有頂天になった。
「そりゃそうなるわな。何とか近づきたいと思っていた奈菜から、旅行に誘われたんだもの。」
哲司は、その点を重視する。
順序からすれば、当然にスノボーを抱えて行った日よりは後のことだ。
あれから何日程度経っていたんだろう?
そこら辺りが定かではない。
「う〜ん・・・・」と頭を振ったとき、そのせいではないのだろうけれど、哲司には珍しい逆からの発想が閃いた。
「ま、まてよ、・・・・言われた日は分らないけれど、確か、それから数日ぐらいで奈菜がバイトに来なくなったんだ・・・・。」
(つづく)