第1章 携帯で見つけたバイト(その18)
「と言うことはだ・・・・・」とその前後の書類を確認する。
その紙には2穴が開けられている。
恐らくは、ファイルか何かに綴じられていたものだろう。
だとすればだ、こうした女の子の履歴書が束になってあるのではないか。
そう期待をしたのだ。
案の定である。
その周囲からは、何枚もの履歴書が出てきた。
皆、それぞれにポーズは違うが、顔写真のほかに水着姿の写真がついている。
中にはかなり際どいポーズを取ったものもある。
そのつもりで見ていくと、何と数十枚もの履歴書があったことに気がつく。
この女の子の全てがこのプロダクションに所属しているのかどうかは分らない。
事務所として作成する「売り込み用」のプロフィールではないのだ。
多分、それぞれの女の子が申し込んできたときの履歴書なのだろう。
中には採用された子もいるだろうし、当然に不採用となった子もいるのだろうが、それにしても、本名、生年月日、住所、連絡電話番号、そして学校などの履歴もそれぞれの手で直筆で書かれたものなのだ。
女の子がもっとも気にする「個人情報」が満載である。
「これを捨てるか?・・・普通は、シュレッダーにかけるだろう?」
このプロダクション事務所のずさんさを感じる。
「いい加減な事務所だぜ。」
哲司はそう思った。
哲司は、このとき、何らかの具体的な思惑があったわけではない。
だが、これだけの女の子の履歴書を、このままゴミとして捨てるのはもったいないと単純に思っていた。
何とかして、これを持ち帰りたい。
そして、じっくりと眺めてみたいと思った。
それは、単に、多少はエロチックな写真があるからそれを見たいと思うのと同時に、普通は絶対に表に出てこないであろうこうした女の子の住所や電話番号にも何かしらの関心があったのも事実である。
遠い地域のことではない。
殆どが、この市内の住所なのだ。
今、哲司が住んでいるアパートから、ほんの数分の距離の住所もあったし、ふと、そうした女の子の日常を見てみたいと思う気持もあった。
「ゆっくり見てから捨てても遅くは無い。」
哲司はこれらを持ち帰る方法を考えることにする。
「何か入れるものを確保しなければ・・・。」
その時、ふいに後ろに気配を感じて振り返る。
山田だ。山田がボーっと立っていた。
「何か?」
哲司は今の自分の行動を見られたのではないかと不安になった。
だが、山田はそんな風でもない。
「あのう、ここにあるものは、全部捨てるんですよね。」
訳の分からない事を言ってくる。
(つづく)